コーヒーの香りは、芸術・文化の香り

これは、私の個人的な感覚に過ぎないのかも知れませんが、私の中では、コーヒーの香りはいつも芸術や文化と結びついています。
音楽や美術そして文芸など、いずれもコーヒーの香りが似合っているような気がします。

若い頃、郷里の高知で、私が通った「木馬」というジャズ喫茶には、一目見て分かるそういうにおいを漂わせた人たちが、よく出入りしていましたし、マイナーでマニアックなイベントのポスターが貼られていたり、チラシを置いてあったりしたものです。
私も当時、関わっていたいた演劇集団のイベントのポスターを貼らせてもらった覚えがあります。

また、同じ街に「笛画廊」というスペースがあって、そこは以前はコーヒーも飲める画廊喫茶でしたが、その頃はもうコーヒーを出すのは止めていて、ガランとしたスペースで年中小さな個展が開かれていました。
中でも面白かったのは、毎月一回、そこを一週間くらい借り切って、前衛アートのイベントをやっている人がいたことです。
そこではコーヒーは飲めませんでしたが、逆に私は、アートからコーヒーの香りを連想していましたね。

そして郷里を離れて東京へ出て来た時、まっ先に探し回ったのは、自分の居場所になりそうな「店」でした。
ずい分あちこちに出没していましたが、間もなく見つけてお気に入りだったのが、代々木にあった「いちごの目覚まし時計」という店でした。
週末には、アメリカのヒッピーなにおいがプンプン漂って来る、ブルースやロックのライヴがあり、しょっちゅう聴きに行きました。
また、いろいろなイベントのポスターやチラシ、ミニコミなども沢山置かれていて、私にとっては、自分の欲しい情報を得られる貴重なチャネルでもありました。

中でも特別刺激的で面白く、楽しみにしていたのが「なまえのない新聞」というミニコミで、日本のヒッピームーヴメントに関する情報はすべて網羅していただけでなく、世界中のあちこちのネイティブピープルの状況やエコロジー運動のことなども伝えていました。

ちなみに「名前のない新聞」は、1972年から数年間刊行され、休刊の後1988年に復刊し現在も発刊されています。

そしてその後、私はフォークロアセンター<参照>と関わることになったわけですが、そこでも出入りしていたのは、やはり美大や音大や文学部の学生など、芸術・文化のにおいのする人たちでした。
工科系出身の私にとって、彼(彼女)らは、いつも新鮮な刺激をくれる人たちでした。
そんな中に、有名なクリエーターを次々と輩出したことで知られる「セツ・モードセミナー」に通ったり、卒業した人たちが何人かいて、よく顔を見せてくれました。
その中の一人は一時期、私と一緒にフォークロアセンターのスタッフをやりましたし、別な一人とは、今でもおつきあいがあります。

私にとって、何かと記憶に残っているその「セツ・モードセミナー」の創設者長沢節は、会津若松の出身だっということを後年知り、奇しくも私がその会津の一角に移り住んで暮すようになるとは、当時は想像も及びませんでした。

そんな風に、思い返せば私の人生のそこかしこに、芸術・文化に関わる人たちとの出会いや楽しい語らいがあり、側にはいつもコーヒーの香りが漂っていたような気がします。
ひょっとすると、コーヒーの香りには、クリエイティブな感性を触発する何かがあるのじゃないかと、今、そんなことを思っている私です。

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コーヒーの香りは、芸術・文化の香り」への4件のフィードバック

  1. 飯塚豊弓

    コーヒーと言えばジャズ、高校生のときレコードを買うお金がなかったので御茶ノ水の「響」によく通っていました。赤塚不二夫に似た店主の方をよく覚えています。コーヒーが苦手だったので、トーストをかじりながら何時間も自分のリクエストがかかるまでねばっていました。ガロやばくを知ったのもこの店です。獅子文六の「珈琲と恋愛」という小説をずっとさがしていて、この間やっと古本屋で見つけました。珈琲には胸をくすぐる何かがあります。

  2. めい

    先日家族が岐阜に来てくれて野菜と共にパンやクッキーも一緒に持ってきてくれました。
    やっぱりおいしかったです(*´艸`)~.*:・’゜☆。.*;.*:・
    中学生の頃会津若松の中合の隣にある『蔵』によく行っていました。
    コーヒーはまだあまり飲めなかったのでミルクティーとパングラタンを注文して長々と友達と話したり勉強したり本を読んだり…
    喫茶点やカフェの落ち着いた雰囲気がとても居心地がよくてすきです(*о´∪`)о〃

  3. Mikio

    飯塚さん、コメントありがとうございます。
    御茶ノ水の「響」、残念ながら私は行ったことがありません。
    お茶の水で行ったのは、楽器屋とレコード屋だけでした・・・。
    それにしても、昔は長閑でしたねえ。

  4. Mikio

    めいちゃん、コメントありがとう。
    そうでしたか・・・。
    この間、沢山お買い物して行かれましたので、ひょっとしてと思いました。
    良かったですね。
    今は、中学生でもカフェに行くんですねぇ。
    楽しい思い出になっていて、羨ましいです。

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