日別アーカイブ: 2013年7月25日

食工房の酵母種

天然酵母

タンクの中で、盛んに泡を吹く酵母種


今日は、酵母のお話しです。

パン屋にとって一番大事なもの、それは酵母種です。

もっとも今は、工業的に製造されたイーストが主流で、これは供給を外に頼るわけですから、大方のパン屋にとっては、一番大事なものではないかも知れません。
しかし我が食工房のように、自家培養のパン酵母を使うパン屋にとって、酵母種は命の次に大事なものに違いありません。
これがなかったら、そもそもパンが焼けません。
そして、そのパン屋の風味や食感などの特長を決定づけるのは、先ず第一に酵母種です。

私が初めてパンを焼いたのは、22歳の頃でした。
この時はドライイーストを使いました。
その後、天然酵母というものを知り、酵母が自然界に普遍的に存在するものであることを教えられ、それなら自分で酵母種を造ることも出来るわけだと、持ち前の好奇心から研究が始まりました。

身辺に詳しい人がいるわけでなく、世の中にもほとんど情報はありませんでしたから、独学で直感だけが頼りという心許ない研究ではありましたが、最終的には「酵母種は、いつでもどこでも、どんな材料からでも造り出せる。」という確信を得るに至りました。
もっとも、これは当然の帰結ではあったのですが・・・。

それで今食工房で使用している酵母種はというと、かれこれ25年くらい前になりますが、私が家族と共に阿武隈の山中で山暮らしを始めてすぐの頃、沢の水に小麦粉を溶かしただけ、という簡単な仕掛けで抽出した酵母種が出発点です。
そこから、沢の水と小麦粉と少量の糖分と塩を足しながら、培養し続けているのです。

今はもう、現地の沢の水は得られませんから水道水を使っていますが、一度活力を得た酵母種は、元の沢水でなくても十分活発に増殖します。
そして繰り返し増殖培養することにより、雑菌は淘汰されて純粋な酵母種になって行きます。

で、自家培養酵母種で面白いのは、酵母と共生している乳酸菌のバランスをコントロールすることにより、出来上がるパンに様々な風味と食感を与えることが可能だということです。
例えば、食工房でプンパニッケルに使用しているザワータイクという専用の酵母は、元は先ほど来お話しして来た、同じ沢水由来の酵母です。

一方、あんパンやカネリプッラも同じ酵母です。
違うのは、培養基(酵母の栄養になる材料)と水分環境、温度環境、発酵時間の長さです。

結局、何もかも自己流で、ここまで来るのに30数年。
挑戦は、今も続いています。

余談になりますが、私はワインもビールも皆この酵母種で発酵させて造ります。
以前、そんなお話し、申し上げたことがありました。<参照>