ライ麦全粒粉をめぐる諸事情

麦ラボ

2017年産、食工房畑のライ麦

地元産のライ麦が在庫切れとなり、一時的な措置として仕入れ品のライ麦全粒粉を使用しています。

出来る限り品質の良いものを入手したいと手を尽くす中で、今まで考えが及ばなかったいろいろな事情を知ることになりました。

これまでに試したライ麦全粒粉は、北海道産、カナダ産、オーストラリア産、アメリカ産、ドイツ産ですが、北海道産は、業務用の単位で購入することが難しいくらい品薄で、あきらめました。

カナダ産のものも品薄で、少量パックのものしかありませんので、これも断念。

オーストラリア産のものは、品質は悪くありませんが、挽きが細か過ぎるので食感に違いが出てしまいます。
風味も、かなり違います。

アメリカ産のものはさらに挽きが細かくて、食工房の仕様には合いません。

ドイツ産のものが、中では一番食工房の要求に合っていて、これを使って行こうとほぼ決定したところで、思いがけない問題があることが分かりました。

ライ麦全粒粉なのに、袋の裏面の表示には、「ライ麦、小麦」とあります。
誰が見ても、小麦が混ぜてあるの?と思います。
ところがそうではないようです。

ある製品には、さらに詳細な説明が記載されており、それによると、小麦と同一の輸送経路を使用するため、微量の小麦が混入しているとのことでした。
つまりわざと混合しているのではありませんが、微量の小麦が混入していることを承知してくれということなのですね。

否、分からないではありません。

穀物の輸送には、フローコンベヤという機械設備が使用されますが、小麦を扱った後にライ麦に切り替えると、初めの一定時間長い経路の中に残った小麦が押し出されて来ます。
しかし十分時間をかけてもなお、完全に混入を排除することは出来ません。

中を清掃すればいいわけですが、そう簡単ではありません。
細かいパーツまで全部取り外してクリーニングしないことには、一粒残らず取り除くことは出来ませんし、その作業の膨大さは大変なものです。

また収穫現場でも異なる作物の混入があり得ます。
コンバインや乾燥機などを複数の穀物で共用している場合は、作物ごとに完璧なクリーニングを行わなければ、微量の混入はどうしたって避けられません。
大きな機械設備になればなるほど、それは難しい課題になります。

だから、たいていの米作農家は、麦を作りたがらないのです。
異物の混入は、先ず以て避けなければならないことの筆頭だからです。

では今まで小麦の混入は無かったのかということですが、決して無かったわけではありません。
その可能性があるからこそ原穀を入手して自家製粉していたわけで、製粉機にかける前に目視で選別していたのです。
最初から粉になっているものでは、それは出来ませんから。

さて、それでは食工房はどうするのかということです。
堅焼き黒パンやライ麦入り角食パンなどのように、元々小麦と混ぜて使うことを前提としているものは問題ありませんが、プンパニッケルだけは100%ライ麦でやりたいし、今までそうしてきたわけです。
※初めの頃の一時期、小麦を少し混ぜていたことがあります。

そこで、この微量の小麦の混入をどのように評価するかです。

一方、パンづくりの作業現場にも目を向けなければなりません。
食工房の作業場では、主に小麦粉を使って製品をつくっていますので、作業台の上はもちろんですが、室内全体にいつでも小麦の微粉が存在しています。
プンパニッケルの生地に、小麦粉の混入はないかと言われれば、否、あり得ると答えるしかありません。
まあそこのところだけは避けようもありませんから、この際ご承知いただくしかありません。

しかし、原料のライ麦全粒粉にはじめから微量の小麦が混入していることを、止むを得ないこととして承知するかどうかについては、ちょっとすぐには結論が出せません。

皆さまには、今後この点を予めご承知の上で、プンパニッケルをお求めいただきますよう、改めてお願い申し上げる次第です。

今回の件についてご感想やご意見を、コメント欄にご投稿いただければ幸いです。

ライ麦全粒粉をめぐる諸事情」への2件のフィードバック

  1. MIKIO AOKI 投稿作成者

    兵庫の松原の連れ合いさん、貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございました。
    私としては、小麦が全く一粒も混ざっていてはいけないと思っているわけではないのですが、避けるための最低限の努力程度はした方が良いと思っています。
    原穀をパッと見て、あちこちに小麦の粒が散見されるようなら、要選別です。
    実は、小麦以外にも畑の雑草の種や小石などが混入していることも少なくないのです。
    以前、カラスノエンドウの種が沢山混ざったものがあって、大変困ったことがありました。
    異物混入は、いろいろな意味で避けたいことではあるのです。
    一方、アレルギーの問題に関しては、元々食工房は対応し切れると思っていませんので、その方向の宣伝はしないよう気をつけています。
    今回、松原さんのご助言に従って、原材料表示の欄に一行書き加えました。

  2. 兵庫の松原の連れ合い

    食品の「品質保証」について・・・。とても難しい問題ですね。
    日本でも過去の大手食品メーカーや一流料亭をめぐる「食品偽装問題」以降、何かと取り沙汰される事が多くなりましたね。
    遺伝子組換え作物の表示方法も然りですが、アレルゲン物質の表示に関してもかなり神経を使っている方が多い事でしょう。
    食工房に対しても、そのような問い合わせがあったのかも知れませんが、正直なところ色々と難しい問題を含んでいて、食工房のパンを愛する皆さんも「コメントしづらい」問題だと思います。
    私自身は幸いにして「アレルギー」と言うものに悩まされる事なくこの歳まで生きてこられました。
    「ある人にとっては何でもないものが、別の人にとっては生死を左右する程の猛毒になる」
    いつの間にか人間社会はそんな「とても扱いづらい問題」を抱え込んでしまいました。
    農学と生物学を学んだ者として「現代人の食と生活」に関しては色々思うところがありますが、それを述べてみても何も始まらない事でしょう。

    ただ一つだけ言えることは、食工房は別に「『小麦アレルギー患者対応食品』としてプンパニッケルを作っているのでは無い。」と言うことです。
    重度の『小麦アレルギー』の皆様は毎日とても大変な中ご生活なさっていらっしゃることと思います。
    今の日本で「小麦が混入している可能性が全くない加工食品」を探しながら生活してゆく事は、困難極まることと思います。
    そのご努力とご苦労には、ただただ、頭が下がり、一言の反論も御座いません。
    その上での話として、食工房のプンパニッケルは「小麦が混入している可能性が全くない加工食品」では無いことを皆様にご理解いただくしかないのだろうと思います。

    こう言う「責任逃れの『逃げを打つ』ような文章」は、書いていても気持ちが悪いですが、今の世の中では致し方ないのかも知れません。
    「後から言い訳をすることは許されない。だから先に言い訳をしておく。」これを称して「作り手のリスク回避」と言うのでしょう。
    本当に、困った時代になったものです。その内に列車や路線バスの乗車券に「事故が起こると死亡するかも知れませんので注意しましょう。」と書かれる日が来るかも知れませんねww。
    閑話休題。

    現段階で食工房として出来る最大のことは、プンパニッケルの通信販売ページの
    ”主原料はライ麦全粒粉のみ。”と言う表示の後に、”(本製品は小麦、卵、乳製品を使用している工場で生産しております。)”と明記することくらいでしょうか?
    何だか妙な表示方法ですが、「消費者の誤解を招かない表示」と言えばそうかも知れませんね。

    こんな感じの感想と意見ですがよろしかったでしょうか?

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