この半月あまりの間、近所のおばあちゃんが豆ぶちをしているのを見ています。
中島に引っ越して来てすぐお隣になったので、庭にシートを敷いてその上にさやに入った小豆を広げ、木の棒で叩いてさやから出す作業をしている様子を、毎日目の当たりにしています。
もちろん雨が降った時は出来ませんが、お天気が良い時は早朝夜明けからトントンと豆をぶつ音がしています。
一粒でも無駄にしないためには、根気強く丁寧にぶたなくてはなりません。
ただ強くぶったのでは、割れたり弾け飛んだりしますから、その加減はなかなか難しそうです。
そうやってさやから外した小豆が、そばの竹で編んだかごに入っていましたが、まだまだゴミが沢山混ざっています。
下の川まで持って行って水洗いするのです。
すると大方のゴミは、浮いて流れます。
また実の入りの悪い粒も浮かんで来ますから、取り除きます。
もうすっかり冷たくなった川の水ですから、作業も大変だと思います。
それから水を切って、日の当たる場所に広げて乾かします。
今日は風も吹いてよく乾いたと思いますが、落ち葉が飛んで来て上に乗ってしまいましたから、あとで取り除かくてはなりませんね。
そしてそれで終わりではありません。
今度は家の中で、時間さえあれば選別をするのです。
虫に喰われたもの、未熟なもの、その他状態の悪いものを取り除きます。
今年は夏のお天気が異常でしたから、小豆の収穫は無いかも知れないと聞かされていたのですが、大方一ヶ月遅れになりましたが、そこそこの収穫があったようです。
しかし粒の状態は必ずしも良くなくて、選別で大きく目減りしそうだとこぼしていました。
そして選別を終えたら、やっと私のところへ持って来てくださるという段取りです。
本当に、手数の多さとかかる時間の長さ、そして何よりおばあちゃんの損得抜きの働きに、ただただ頭が下がります。
こうした仕事をしてくださるおばあちゃんが、私の集落に数人いらっしゃいます。
新小豆がもうすぐ入荷します。
兵庫の松原の連れ合いさん、いつもお世話になっております。
今は、その手間を省くために、機械や強い農薬を使うのですね。
安くてきれいで、いつでもどこでも手に入ります。
その代わり、おばあちゃんたちが作った小豆のような優しい味わいは望めません。
どちらを取るかは、皆さん次第です。
ヒトは大昔からこうやってあずきを食べてきたのですね。
ここまでしないと「あんこ」は食べられなかったのですね。
小豆が貴重品、砂糖が貴重品、食べ物はすべからく皆「貴重品」だということが身にしみてわかる気がしました。
おばあちゃんの労力を考えると、私がもし、この小豆で「あんを炊け」と言われたとしても「絶対失敗できない」プレッシャーで怖くて炊けません。
もちろんプロの皆様は、「失敗しない」ように炊くのでしょうが、相当に気合が入ることでしょう。
昔は、どこのご家庭でも当たり前のようにこうやって小豆を手に入れていたのでしょうね。
スーパーマーケットでビニール袋にキレイに包装された「あずき」や、既に食べられる状態になった缶詰の「ゆであずき」しか知らなかった私にはとても心に刺さるリポートでした。感謝。