食工房の自前の圃場で収穫した麦(ライ麦、スペルト小麦)を使うようになってから、パンがおいしくなったと、沢山の方から評価を頂戴しています。
私が自分で言うのも何ですが、確かにおいしくなったと実感しています。
それにも増して大きな変化は、香りの良さです。
今回のようなライ麦やスペルト小麦の麦芽の香ばしい香りは、これまでに味わったことがありません。
また麦そのものの味わい深さも、今までには無かったものがあります。
これはもう、自然界からの素晴らしいプレゼントです。
ずっと以前、カナダから直輸入されたオーガニックのライ麦原穀を自家製粉して使っていましたが、この時だって今回のような満足の行く品質に出会ったことはありませんでした。
また最近使用していた製パン材料として市販されているライ麦全粒粉も、全く納得の行く品質ではありませんでした。
そこで、これほどまでに大きな違いが出た理由を考えてみました。
まずライ麦ですが、収穫時にしっかりと登熟を待ってから脱穀したことが一番の理由だと思っています。
私がライ麦を初めて見たのは、カナダ産のオーガニックのライ麦原穀でしたが、その時の印象はライ麦って緑色っぽい灰色をしているな・・・というものでした。
小麦は、いわゆる小麦色と言われる日焼けした肌の色をしていますが、ライ麦はそれに比べればほとんど緑色に見えます。
しかし自分で栽培するようになって気づいたのは、登熟を待てばライ麦も小麦ほどではありませんが、茶っぽい色合いになって来ることでした。
それまで見ていたライ麦に比べて、粒も大きくなりましたし、つまりこれは未熟なうちに収穫しているのだなと気が付きました。
ではどうして未熟なうちに収穫するのでしょうか。
考えられるのは、ライ麦は背が高く穂が重くなってくると茎が折れたり倒れたりしやすい事、また穂は殻に包まっていなくて剥き出しの状態で、刈り遅れるとカビが付いたり脱粒してしまうリスクもあることなどのため、若干早刈りすることでリスクを避けているのだろうと思われます。
実際、今年の中島第一圃場では、強い風のせいもあってめちゃくちゃに折れたり倒れたりして機械での収穫が出来ず、すべて手刈りしてハザにかけ。天日乾燥してから脱穀しました。
しかし後になって分かりましたが、第二圃場のライ麦に比べてもここのライ麦が一番品質が良かったです。
一方スペルト小麦は、それ自体の素性の良さもありますし、風味が良いのは当然だろうと思っています。
それより、栽培に関しては経験も浅くノウハウもありませんでしたから、決して会心の出来というわけではありません。
むしろ反省点が多いくらいなので、いくら風味が良いとは言えこれに満足せず、さらに上を目指したいと思っています。
以上、自前で麦を作付けして一年目から、早くも多くを学ぶことが出来ています。
さてここから後は、この収穫の喜びと満足を如何にパンづくりに還元して行くかです。
この麦の良さを生かし切るパンづくりのため、日々研鑽怠りなく磨きをかけたいと思います。