日別アーカイブ: 2021年7月9日

思い通りに行かないから、謙虚になれる

麦作りをしていて思ったことです。

農業という仕事、先ず一つは植物という命あるものを相手にしていること、次にお天気という人間の力ではどうにも動かすことの出来ない自然現象に左右されること、またその場所場所の土壌環境に左右されること、そして虫や鳥や動物たちの食害、さらに病害と戦わなくてはならないこと。

それらの中で、我々人間の努力によって改善出来る部分もありますが、どうにもならない部分も少なくありません。
だからと言って、その場その場に成り行き任せで良いかと言えば、そうは行きません。

やはり計画は必要です。
それも一年間という時間のサイクルを頭に思い描きながら、種まきから収穫までの工程が順調に進むために、どの時期に何をすれば良いか綿密に計画し準備しておかなくてはなりません。
且つ、その場その場に想定通りに行かない時の臨機応変な措置までも考えておく必要があります。

さらには、5年先10年先までも持続可能な土壌の循環を計らって行かなくてはなりません。

一方、食工房の中の仕事つまりパン屋ですが、天然酵母という不確定要素の多いものを扱っていてさえ、概ね何事も計画通り予定通りに進みます。
毎週決まった曜日の決まった時間に仕込みをして、決まった時間までにパンが焼き上がります。

お客さまのご注文に応じて、数を増やしたり減らしたりも自由自在です。
そうして考えると、ほとんど何でも思い通りです。

比べて畑のことは、全く思い通りにはならないと感じます。
本当に難しい・・・!

しかし、私たちの生存は、そもそもそういうものだったはずで、土から作物を得る仕事をすることになって、改めてそれが分かったような気がしている私です。

私の娘たちも同じようなことを感じているらしく、先日際どいタイミングで最後のスペルト小麦の刈り取りが終わった後、引き上げ際に畑に向かって思わず手を合わせて拝んだのだと言います。

分かります、その気持ち!

私もコンバインに乗って帰る道々、畑を振り返り、天を仰ぎ、ありがたさを噛みしめていましたから。

決して自分の力で成し遂げたのではない、これは天地の恵みなのだと素直にそう思えた瞬間、気持ちはずーっと謙虚になれるのですね。