月別アーカイブ: 2021年7月

思い通りに行かないから、謙虚になれる

麦作りをしていて思ったことです。

農業という仕事、先ず一つは植物という命あるものを相手にしていること、次にお天気という人間の力ではどうにも動かすことの出来ない自然現象に左右されること、またその場所場所の土壌環境に左右されること、そして虫や鳥や動物たちの食害、さらに病害と戦わなくてはならないこと。

それらの中で、我々人間の努力によって改善出来る部分もありますが、どうにもならない部分も少なくありません。
だからと言って、その場その場に成り行き任せで良いかと言えば、そうは行きません。

やはり計画は必要です。
それも一年間という時間のサイクルを頭に思い描きながら、種まきから収穫までの工程が順調に進むために、どの時期に何をすれば良いか綿密に計画し準備しておかなくてはなりません。
且つ、その場その場に想定通りに行かない時の臨機応変な措置までも考えておく必要があります。

さらには、5年先10年先までも持続可能な土壌の循環を計らって行かなくてはなりません。

一方、食工房の中の仕事つまりパン屋ですが、天然酵母という不確定要素の多いものを扱っていてさえ、概ね何事も計画通り予定通りに進みます。
毎週決まった曜日の決まった時間に仕込みをして、決まった時間までにパンが焼き上がります。

お客さまのご注文に応じて、数を増やしたり減らしたりも自由自在です。
そうして考えると、ほとんど何でも思い通りです。

比べて畑のことは、全く思い通りにはならないと感じます。
本当に難しい・・・!

しかし、私たちの生存は、そもそもそういうものだったはずで、土から作物を得る仕事をすることになって、改めてそれが分かったような気がしている私です。

私の娘たちも同じようなことを感じているらしく、先日際どいタイミングで最後のスペルト小麦の刈り取りが終わった後、引き上げ際に畑に向かって思わず手を合わせて拝んだのだと言います。

分かります、その気持ち!

私もコンバインに乗って帰る道々、畑を振り返り、天を仰ぎ、ありがたさを噛みしめていましたから。

決して自分の力で成し遂げたのではない、これは天地の恵みなのだと素直にそう思えた瞬間、気持ちはずーっと謙虚になれるのですね。

明日はパン焼きの木曜日

明日は、二日の定休日が明けてパン焼きの木曜日です。

昨日の麦刈り、今日は乾燥調製(今も乾燥機が稼働中)と休日返上で働きましたが、充実した疲労感で悪い気はしません。

昨夜は、激しい雨音に何度も目を覚まされましたが、その度に「あぁ、良かった!麦は刈り終わったし・・・。」と、また眠りに落ちる私でした。

あとは、早く新麦を使ってパンを焼きたい!と、そちらに気持ちが向いています。
ライ麦は、購入品があと少しで無くなりますから、一二週間のうちには自家産のライ麦に切り替わります。
スペルト小麦は、昨年産のものがあと一回分あるかないか、新麦が間に合えば上々なのですが・・・。
その他、デュラム小麦、南部小麦、ライ小麦もありますから、目新しいパンも登場するかも知れません。

とりあえず明日は、いつも通りのパン焼きです。
お天気も少し持ち直すようです。

皆さまのご来店を、心よりお待ちしております。

麦刈り、終わりました

昨夜から本日早朝未明の頃まで、娘たちと交代で畑のわきに張り込みました。

午後10時50分、イノシシの群れが現れました。
車が止まっているのに気がついていそうなものですが、何事も無いように近づいて来ます。
ライトの明かりを向けても、動じる様子がありません。
何と図々しい!

それでもずっと照らし続けていたら、ゆっくり向きを変えて去って行きました。
しかしこれで安心は出来ません。
張り込みを解くことは出来なくなりました。
結局その後は現れませんでしたが、これを毎日続けることは出来ません。

明けて本日、何としても麦刈りをしたいのですが、お天気がスッキリしないのですね。
もっと晴れ間も覗くはずだったのでは・・・と思っていると、小雨が降り出す始末。

天を仰いで、恨み言の一つも呟いていたら、少し空が明るくなって来たではありませんか。
とにかく出来るところまでと、意を決して機械を出動させて圃場に向かいました。

まず、高野第2圃場の試験栽培区の麦を手刈りして片付け、ライ麦を刈るためにコンバインが入れるようにしました。
そしてライ麦を収穫。
その間に、またも小雨が降り出すタイミングがありましたが、すぐ止んで事なきを得ました。

前半戦を無事終了して、後半スペルト小麦の収穫のために、コンバインの分解掃除をしていたら三度雨が降り出し本降りになって来ました。

今度こそ万事休すかと諦めかけましたが、午後3時頃には止んで何とか作業が出来そうな状況になりました。

麦はしっかり乾いていた方が良いに決まっていますが、濡れていてもコンバインは支障なく収穫をこなすのですね。
もちろん、収穫後は乾燥機に入れて乾燥させなくてはなりません。

途中何度か小雨に見舞われながらも、何とか最後まで刈り終えることが出来ました。

それにしても、作業が終わって機械を片付けた直後から、土砂降りの雨です。
何という際どいタイミング!

麦は屋根の下に取り込みましたから、一先ず安心です。
もう本当に心の奥底から、「あぁ、良かった!」と胸を撫で下ろしている自分に気がついて、またもう一度「本当に良かった!」と頷いている私です。

娘たちもよく頑張ってくれました。

食工房、万歳!麦ラボ、万歳!

明日は麦刈りを

絶望的だと思っていたお天気が、明日一日だけ回復するようです。
何とか畑も乾いて、麦刈りが出来るのではないかと期待しています。

高野第2圃場のライ麦と中島第3圃場のスペルト小麦を刈り取って、今年の収穫にキリを付けたいと思っています。
うまく行けばいいのですが・・・。

と言うのは、昨日に続いて今朝も、監視カメラにイノシシの画像が記録されていました。
側のおばあちゃんの畑のじゃがいもは、わずかに残っていたものもさらに荒らされてしまいました。

で、出没の時間帯というのが曲者で、昨日の出没は4日の午前1時頃、今朝の画像は昨日4日の午後10時頃でした。
昨夜は、午後8時半過ぎ、午後10時40分頃、深夜午前1時頃、早朝未明午前3時過ぎの計4回パトロールしているのですが、1回目と2回目の間に来ていたのですね。
全く油断がなりません。

明日は残っている麦を刈る予定ですから、それをイノシシに荒らされたのではたまりません。
寝ずの番をしてでも、麦を守る決意です。

そして麦が終わったら、かぼちゃとさつまいもの圃場を電気柵で囲う予定です。

何故このように獣の害が増え続けているのか、それにはちゃんと理由があって私にはそれが見えていますが、いろいろな人がいろいろな事を言うので、口で説明するよりも先ずは状況を端的に正確にお伝えして、そこから先は皆さまにも考えていただきたいと思っています。

ちなみに、明日と明後日は、食工房は定休日休業となっております。
お間違えのございませんように。

イノシシが4頭

今日は、早朝の人足の後、お天気こそ微妙でしたが、中島第2圃場のライ麦を収穫しました。

少し湿気っぽさの残る状況でしたが、今日を逃すわけには行かないと決心し、午後から雨の予報が出ている中作業を開始しました。

昨年のように稲架を作って自然乾燥の工程を取ることはせず、いきなりコンバインで刈り取り脱穀同時に済ませました。
バインダーで刈るよりははるかに速いのですが、面積が広いことと背の高いライ麦はスピードを上げられないこともあり、午前8時半頃から初めて終わったのが午後2時前でした。

終了2時間前くらいから小雨が降り出し、穂先が濡れている状態になりましたが、そのまま続行しました。
選別や原穀の飛散など問題はあったと思いますが、ふり返る余裕はありませんでした。

それでも約350kgの収量がありました。
ライ麦に関しては、まだこの他に高野第2圃場に作付けしている分もありますので、400kgは超えるものと思われます。
やっと食工房の1年分に間に合う量になりそうです。

さて、それはそれで大変目出度かったのですが、今朝監視カメラをチェックすると、そこにはイノシシの画像と映像が記録されていました。

PCで再生して見ると、親と思われる大きなイノシシが1頭とそれよれ少し小さい子どもと思われるイノシシが3頭映っていました。
これまで、単独の個体だとばかり思っていましたので、これは意外でした。
そして、ますます油断ならない状況だと思い知った次第。
早速近所の農家さんたちにもこのことを伝えました。

話が前後しますが、監視カメラをチェックしに行った時、側の畑にいたおばあちゃんから、じゃがいもが被害に遭ったことを聞かされました。
見ると、イノシシの掘り跡が物凄く、ほとんど全滅に近い被害でした。
おばあちゃんの本当に悔しそうなお顔と訴え、心中を察するに余りあるものがありました。

我が家としては、当面スペルト小麦の収穫が終わるまで、一晩中間隔を置いてパトロールに出ることにしました。
その後は、かぼちゃ、さつまいもなどの畑の周りを電気柵で囲うつもりです。

このままでは、稲や蕎麦に甚大な被害が発生することは目に見えています。
複数の農家で力を合わせて、あるいは集落ぐるみで、対策を立てなくてはならないと思っています。

麦ラボ

ビデオカメラが捕えている視野
正面はスペルト小麦の圃場
★画像クリックで映像ファイルが開きます。

まだ大仕事が残っている

麦の収穫が順調に進んでいます。
南部小麦、デュラム小麦、ライ小麦と、少量3種はいずれも今日までに脱穀まで終わりました。

この後に控えているのが、ライ麦とスペルト小麦です。
こちら二つとも10a以上の面積がありますので、作業量も多く数日かかると思います。

その間のお天気がどうなるか、これが決して楽観出来る状況ではないのですね。
向こう一週間、ずっと雨または曇りの予報ですから。
ま、適当に外れてくれることを祈りながら、臨機応変に対応したいと思います。
さすがに疲れも溜まっております。

明日の早朝は、集落の奉仕作業(人足)も予定されています。
河川の両岸の刈り払い作業です。
怪我の無いよう、注意の上にも注意して臨みます。

デュラム小麦の脱穀

麦ラボ

高野第1圃場 デュラム小麦
昨年、スペルト小麦を作付けした跡地のため、至るところにスペルト小麦が勝手に育ってしまい、除去に大変な手間を食った。


麦ラボ

追肥が適切でなかったため、倒伏株が続出。
刈り取りには、大変な手間がかかった。


麦ラボ

スペルト小麦が雑草化して混入してしまいました。
取り除くために、大変な苦労をしなければなりません。


麦ラボ

2021年産 デュラム小麦
品質的には、上等だと思います。

この前の日曜日に、刈り取りをして稲架にかけて置いたデュラム小麦の脱穀を、今日やりました。

ただ今梅雨の最中で、とにかくお天気が不安定ですから、晴れ間があれば他のことは置いて、麦の収穫を優先しています。

そのデュラム小麦ですが、日本国内では作付けの実績はごく限られた例があるのみです。
東北では、多分例が無いと思います。
だいたいが暖地向きのデュラム小麦ですから、雪国では尚のこと難しい・・・。

しかしその常識を破って、食工房麦ラボでは、会津で7年目の栽培実績を更新中です。
今年は、3アールほどの高野第1圃場で、50kg余りの収穫が実現しました。

日本国内産のデュラム小麦は、西日本に一例「瀬戸デュール」があるのみです。
この瀬戸デュールの耐雪試験栽培を、2016~2017年にかけて食工房でも実施しています。
結果は、残念ながら降雪初期に根腐れを起こして枯死。
耐雪性を証明することは出来ませんでした。

一方で、カナダ産のライ麦原穀の中に異物として混入していた麦の一つがデュラム小麦であることが分かり、食工房でずっと試験栽培を続けて来ました。

こちらは雪の中でもたくましく越冬するので、会津で作付けが可能かも知れないと考え、近年徐々に作付けを増やし、ついに実用段階に達したというわけです。

デュラム特有の黄色の発色も申し分なく、風味も普通の小麦とは全く異なります。
水を加えて捏ねれば、早くもパスタの風味そのものです。

まずは、お約束のフォカッチャの新発売ですね。

あと、自家用に生パスタに挑戦したいと思っています。
楽しみです。

麦の話続く

食工房では、いつの頃からでしょう、多分10年以上も前からですが、鉢植えの麦を店の前に並べて皆さまにご覧いただいています。

年々種類も増えて、今では大麦、小麦、ライ麦、デュラム小麦などなど多種多様です。

ある時、近所のおばあちゃんが目を留めて、上の娘に言いました。
「ほう・・・、これは、ご飯に入れる麦だな。」「こっちは、うどんにする麦だな。」と。

自分たちも、昔は麦を作っていたのだそうです。
だから、見てすぐにそれが何であるか分かって、娘に声をかけて来たと言うわけです。

そして別な麦を指さしながら「この麦は、見たことねぇな・・・。」と。
そこで娘は、それがマカロニを作る用のデュラム小麦であることを説明してあげました。
おばあちゃんは、珍しいものを見て感心していたとか。

また別のおばあちゃんは、ライ麦も小麦も大麦も作ったことがあると言い、例えば小麦はいつまでも畑においておくものではないこと、刈り遅れると甘くなるのだと教えてくれました。

さらに、そうなると粉に粘り気が無くなり、うどんを作っても生地がべた付いてこしが無く、食べてもおいしくないとも。

ふーむ、なるほど。
小麦の刈り取り時期の重要さは、おばあちゃんも知っていたのですね。

また、ライ麦でソーメンを作って食べたものだと言うおばあちゃんもいました。
どんなものだったのか詳しく知りたいと思いましたが、お話を伺う機会を逃しています。

こんなふうに、ちよっと時代をさかのぼると、そこには麦を作って日々の食に活用していた風景があったのですね。

お年寄りたちに学べることは、実は沢山ありそうです。
元気なうちに、いろいろお話を聞いておきたいと思っています。


ライ小麦の収穫

麦ラボ

中島第5圃場 ライ小麦


麦ラボ

ライ小麦 収穫作業中


麦ラボ

ライ小麦 近影


麦ラボ

ライ小麦 近影


麦ラボ

ライ小麦 近影

昨日と今日の二日に分けて、中島第5圃場のライ小麦の収穫をしました。

このライ小麦で興味深いことは、小鳥たちがとにかくこの麦に集まることです。
否、そんなにおいしいのか・・・と思います。

ですから、私たちにとっても食味の良い麦なのだろうと考え、それまで試験栽培に止めていたものを昨年から実用レベルにまで作付けを増やしたというわけです。

実は昨年、わずかに一度だけでしたが、パンを焼いて食味テストをしています。
否それが、なかなか風味絶佳で、これはイケると思ったものですから。

今回の収穫で、多分数十キログラムは取れるものと思います。
それをパンづくりにどのように活用するか、うれしくまた楽しみな課題です。