麦藁及び残渣の焼き払い

麦の収穫後、圃場には麦わらと脱穀屑また雑草などが残されています、

トラクターですき込みという手もあるのですが、雑草など他の植物の種が残る可能性があること、害虫駆除の目的、病害のもとになる菌類の焼却、野ネズミを追い出すため、それらの理由により圃場全体を焼き払うことも効果的な手法となります。

昨年は、麦わらを細かく刻んですき込みましたが、虫の害と野ネズミの害が目立ちましたので、今年は焼き払いをするつもりでいました。

しかしながら広い圃場に火を放つのは、一つには危険を伴いますし、うまく燃え切らなければかえって手間がかかることになりますから、慎重にタイミングを見計らっていました。

収穫直後からしばらく雨が続きましたので、麦わらはすっかり湿気っており、まずは晴天が続いて乾くのを待っていました。
そして風のない穏やかな晴天を待って、昨日と今日の二日かけて中島第2圃場と中島第3圃場の焼き払いを実行しました。

それぞれ夕方から1時間程度できれいに燃え尽きました。
燃え盛っている時はさすがに緊張しましたが、想定通りに燃え広がり、適当なところで反対側から迎え火を放って圃場の中ほどで燃え尽きました。

このところ、焚火による山火事が多いですから、自分が悪い例を作ってしまっては今後火を使うことも出来なくなると、慎重な上にも慎重に風向きや火の回りを判断し、火を点ける箇所も良く選んで事に当たりました。
おかげさまで、何を案ずることも無く全くあっけなく終了しました。

ま、こんなことも、近くに人家も無い山間だからこそ可能なわけで、また、今日の炎は、獣たちには小さな山火事くらいの迫力があったはずですから、獣害対策上も上首尾だったのではないでしょうか。
焼け跡に最初にやって来るのは誰か?監視カメラも設置しています。

何故、獣害対策に一生懸命になるのか

我が集落のような中山間地区の小集落では、獣の害が深刻です。
特に、熊とイノシシと猿は、生命に危険が及ぶこともあるので、真剣な対策が必要です。

大切な作物を食害するから、周辺の環境を荒らすから、それらを防ぐためというのが対策の主な理由だと理解されていると思いますが、本当はそれよりも重要な視点を忘れてはなりません。

それは、私たちの生活の安全(生命の安全と言ってもよい)を守るという、にわかには結び付きにくいけれど、一番の眼目は実はそこにあるのです。

前々から申し上げているように、野生の動物たちがただ無条件に本能的に人を恐れているというのは、もはやとんでもない誤解だと知るべきです。
彼らが人を恐れるか否かは、人との関係の中で学習された結果でしかありません。

その学習は、いつでもどこでも不断に行われているのであって、どんな生き物でも条件が揃えば人を恐れない、あるいは人に構わない振舞いをするようになります。
ネズミだって然り!

だから、獣害対策の要は、人間の私たちの縄張り宣言をする、それを行動で示すことにあります。
草刈りをしたり、木を伐ったり、火を焚いたり、大きな音をたてたり、本当はたまには狩りをして強烈なメッセージを送ることも必要です。

ですが、今の私たちには、獣たちに直接手出しすることは禁じられています。
とりあえず出来る方法を、精一杯頭を使って行使する以外、今のところ有効な対策はありません。

被害を報告し捕獲を願い出ても、直ちに採択されるわけでもなく、わなを仕掛けて一定期間が過ぎてかからなかった時は、それ以上の手が打たれることはありません。

昨年の例のように、せっかく捕獲した大熊を山に放してしまうのですから、何が危険なのか、この人たちには理解出来ていません。

先ずは、動物たちのことをよく観察し、知ろうとすることです。
時間と手間はかかりますが、小さな手掛かりは沢山あります。
初めの頃、全く余計な手間暇だと思いましたが、最近、命ある者として生きるということは、本来そういうものかも知れないと思うようになりました。

今後、獣害は、むしろ都市部でより深刻になって行くだろうと思います。
そのストーリーは、もうすでに始まっています。

もっともっと深刻になって初めて、社会の問題として取り上げられるようになるのでしょう。
それでもしばらくの間は、何をどうして良いのか分からず、見当違いの模索が続くことと思います。

そんな間にも、せいぜい被害に遭わないように、命の危険を避けるように、慎重に且つ大胆に、動物たちと駆け引きしながら生きて行きたいと思っています。

うちの麦は、やっぱりおいしい

今週から、自前の麦畑で収穫した麦を使っています。

やっぱりうちの麦で焼くパンはおいしい!と、家族全員の一致した感想です。
ま、自画自賛と言われても仕方ありません、自分たちの偽らざる感想ですから。

どうしてなんだろうね・・・と、娘たちと話しています。
それにお客さまだって、認めてくださっている方が沢山いらっしゃいますから。

これから来年の収穫まで、雪室から少しずつ小出ししながら、一年間のパンの材料に間に合わせる予定です。

畑に種を播くところから、刈り取って脱穀乾燥、精麦製粉、そしてパンこね、焼き上げてやっと皿にのせて口に運ぶまでの、何と何と長い道のり!一通りやって見て初めて分かることが沢山沢山あります。

どれもこれも、パン屋の知見として無駄なものは一つもありません。
むしろ必要ではないかと思っています。

今夜も、おいしいパンになろうね!と気持ちを注ぎながら酵母の仕込みをしました。

明日もまたおいしいパンを焼いて、皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

思いがけない祝日

今日は、本来7月19日のはずだった海の日が、今年限りの特例措置として今日7月22日に移動したのだとか。
そして明日はスポーツの日(本来10月10日を、これも移動)で、東京オリンピックの開会の日にあたります。
週末土曜日、日曜日につなげて4連休としているところも多々あるようです。

食工房にしてみれば、祝祭日、土日は営業していることがほとんどですから、世の中のお休みモードは、ご来店のお客さまが多くなることで感じられたりします。

今日はその例に漏れず、パンが焼き上がるお昼頃から後の時間、次々とご来店のお客さまが相次ぎました。

正直、今日が海の日だなんて、今朝の今朝まで知りませんでした。
明日から日曜日まで、今週末はご来店のお客さまが多くなるのかな・・・、だったら少しパンの仕込みを増やさないといけないかな・・・などと、今になって考え始めているのですから、ちよっと世間ずれも甚だしくなってますね。
畑と店の間を行ったり来たりの毎日が続いていますのでね。

テレビもあんまり見ませんし、新聞は取っていませんし、ラジオも聞きませんし、ネットのニュースは見る時には見ますが、忙しい時はそれも遠のきます。
かくして世間音痴が生まれるというわけです。

で、明日も皆さまのご来店をお待ちしております。

電気柵設置

過去数年間の7月の記事を読み返していたら、ちょうど今頃、猿が畑を荒らしにやって来るのですね。

畑には、かぼちゃやとうもろこしその他夏野菜が実って、奴らにとってはより取り見取りのバイキングレストランです。

毎年、大なり小なり何らかの被害に遭って来ていますので、今年も猿除けネットを張り巡らしています。
ところが今年は、イノシシという強敵が現れましたので、猿除けネットでは不安が拭えません。

今後のことも考え、電気柵に切り替えて行くつもりです。
また一部、ワイヤーメッシュの柵と電気柵を組み合わせて防御する作戦も試します。
費用はかかりますが、ライ麦やスペルト小麦を無事に収穫するためには止むを得ません。

今回、先んじて中島第一圃場の一部に電気柵を設置しました。
動物たちがどんな反応をするか、万全な効果が上がるかどうかも含めて、監視カメラを設置して観察します。
とりあえずも本日、猿の出没前に設置出来たので、ホッと胸を撫で下ろしているところです。

さて、明日からまた食工房の営業の一週間が始まります。
今週から、全粒粉の入っているパンは、すべて新麦仕様になります。

フォカッチャも再開です。
フオカッチャは、オンラインストアでの販売も始まります。

猛暑が続いていますが、明日もおいしいパンを焼いて、皆さまのご来店をお待ちしております。

気温30℃超でポイント2倍!実施中です。

雪室、入庫完了

本日、収穫したすべての種類の麦の雪室(低温倉庫)への入庫が完了しました。

当地区の雪室は、入出庫は火曜日と金曜日の二回のみと指定されていて、昨日のスペルト小麦の他、デュラム小麦、ライ小麦、南部小麦など合わせて17袋、総重量約450kg、先に預けたライ麦と合わせると750kgにもなる量です。

昨年とは比較にならない大量の麦、暑い夏に向かう時期ですから、一日も早く雪室に入庫する必要があるのですね。
本日の入庫完了の感激は言うまでもありません。
大きな大きな安心感です。

そして今年は、新麦への切り替えがスムーズに行きましたので、今週のパン焼きから全て新麦を使います。
ライ麦、スペルト小麦そしてデュラム小麦です。

暑さの夏のこの時期、食欲はどうしたって冷たい麺類などに向きますが、たまにはパンもお忘れなく。
工夫次第で、暑さに対抗するスタミナ食にもなります。

今度正式に発売となるフォカッチャは、ピザのご先祖とも言われていて、夏野菜やチーズそれにベーコンなどを挟み、あるいは上に乗せて、ピザのように焼いて召し上がれるのでおすすめです。

一方、本日は、試験栽培区で育てた9種類の麦の脱穀調製を終わらせました。

それぞれ機械にかけるほどの量ではありませんが、かと言って手作業では到底終わらない作業なので、コンバインをその都度分解掃除しながらやりました。

何しろ、すべて種子用ですから、他の種類と混ざるのが一番の大敵です。
機械の掃除は、念には念を入れて外せるパーツはすべて外して、一粒も残っていないことを確認しなければなりません。
これを9回やりましたが、脱穀している時間がわずか1~2分、一方掃除は一回20分はかかると言った具合でした。

それでも、足踏み脱穀機と唐箕でやるよりははるかに能率的です。

こんな大変な思いをしても、湧いてくる興味には勝てないのですね。

麦ラボは、ますます進化そして深化しています。

スペルト小麦、籾摺り作業2021

麦ラボ

昨年と全く同じ配置です。


麦ラボ

籾摺り機 籾投入口
計量カップですくって投入して行きます。


麦ラボ

セット完了!作業開始です。


麦ラボ

籾摺り機排出口から選別機に直結


麦ラボ

2021年産 スペルト小麦
大変きれいな粒です。


麦ラボ

こちらは選別下 粒が小さく、不完全な粒が沢山混ざっています。
重量的には、30kgほどでした。
10%落ちですから、まあ上等の出来です。


麦ラボ

麦殻 これで本当に中身が取り出せているのか?と思わせる外観
実際に割って確かめたくなりますが、脱ぷは完全です。


麦ラボ

ダメージを受けて潰れてしまった穀粒が沢山出ていました。
刈り取り時に穂が乾いていなかった影響もありそうです。

本日は、朝から麦仕事で一日が終わりました。
スペルト小麦の籾摺り作業です。

昨年と比べて2倍以上の収穫がありましたので、それだけ時間もかかりました。
完全な脱ぷときれいな穀粒のために、2回通しする必要がありましたが、仕上がりは全く申し分のない良好なものとなりました。

これで、2021年産のスペルト小麦の収穫が確定しました。
295kgの選別済粒と約30kgほどの選別下、合計330kg弱でした。

あと種子用として籾摺りしないものを約12kgほど、別途確保しています。
これを雪室に入庫すれば、すべての収穫に関わる作業が完了します。

あとは、来年に備えて圃場の片づけと整備が待っています。

デュラム小麦に関する考察

麦ラボ

デュラム小麦のセモリナ
カッターナイフで切断して、断面を出して見ました。
芯まで半透明の黄色です。

日本の気候では栽培が難しいと言われて来たデュラム小麦ですが、近年国産品種も開発されて、日本国内でも作付けされる例が出始めています。

デュラム小麦は、別名マカロニ小麦とも呼ばれます。
小麦には大まかに二つの系統があって、一つが私たちが良く知っているいわゆる小麦粉、これはパン小麦という分類になります。
そしてもう一つがマカロニ小麦です。
こちらは、主にイタリアでパスタの原料として使われている小麦です。

少し前、パスタがブームになったことがありました。
今では、パスタとイタリア料理は、日本でもすっかり定着していますが、当時から国産原料でパスタを造りたいという需要は当然あって、普通の小麦粉で挑戦する例も多々見られました。

そんな中、地中海型気候の瀬戸内の広島県で、国産初のデュラム小麦の品種が開発されました。
その名も「瀬戸デュール」。

行政、食品業界、(独)農研機構などが組んで、地域の特産にしようと積極的に取り組んでいます。
現在は、すでにパスタの製品が出来るところまで進んでいるようです。

さて一方、食工房でデュラム小麦の栽培を何故やるようになったかと言えば、結構長い話になります。

食工房では、ライ麦全粒粉を使っていますが、当初、カナダ産のライ麦原穀を仕入れて自家製粉していました。

ある時、原穀の状態が大変良くない年があり、ライ麦自体の品質も良くありませんでしたが、多くの雑多なゴみなどが混ざっていました。
それを目視で取り除かなければならず、大変な思いをしたことは言うまでもありません。

しかし、その中に所在不明の穀物が沢山混ざっており、どれもほぼ麦に間違いなさそうでした。
そこで、上の娘が興味を示し、一粒ずつ鉢植えにして様子を見ました。

その結果、十種類近くにもなるそれぞれ特長の異なる麦が成長しました。
インターネット上で散々調べ回った結果、いくつかの麦は品種を推定することが出来ました。

その中に、デュラム小麦と思しきものが3種類あり、その中の一つが今実用段階にまで栽培量を増やしたデュラム小麦です。
★参照~デュラム小麦の脱穀

詳細な品種のプロフィールは、もちろん分かりません。
異物として混入していた数粒の麦ですから。
ただ、デュラム小麦としての特徴は確実に備わっており、この麦がデュラム種であることは間違いありません。

今回、満足な品質の原穀が得られましたので、セモリナを得るべく精麦機にかけて見ました。
セモリナというのは、穀物の粒の芯の部分だけを削り出したもののことです。
お米で言えば、酒米の精米のようなものです。

さて、その精麦機にかけること4時間、最初の大きさの半分ほどにまで削られた粒を見て、改めて感激せざるを得ませんでした。

黄色い色が特徴のデュラム小麦ですが、何たって粒の芯まできれいな透き通るような黄色なのですから。
画像を見ていただいて分かる通り、断面は中心部分まで一様に黄色です。
まるで乾麺のスパゲティを折った断面の様です。

明日は、これを粉に挽いて見るつもりです。

こんなデュラム小麦が、雪国会津で育っているのです。
まだ誰に認められたというわけではありませんが、本当は凄いことです、これは。

そして実は、あと2種類のデュラム小麦も、大変興味深い性質を持っていることが分かって来ました。
そのうちの一つは、古代種の可能性があります。
もう一つは、早生で短稈種、そして越冬特性に優れています。

ま、それらは先の楽しみとしておいて、早速来週からになりますが、フォカッチャの再開とオンラインストア での新発売が実現する運びです。

どうぞお楽しみに。

南部小麦丸

食工房

南部小麦丸
焼き上がりの見た目は、スペルト小麦のものと全く同じです。
食感もほぼ同じですが、風味だけが明らかに違います。


食工房

切り口も、見た目は今までと全く変わりません。

スペルト小麦の一時的在庫切れにより、臨時措置として南部小麦の全粒粉を使用して、飯豊山食パン、小麦丸、みのりのパンなどを焼いています。
先日がその第一回目で、是非とも感想をご報告しなくてはと思っていました。
今日、試食をしましたので、諸々ご報告申し上げます。

まず、製造工程で気づいたのが吸水の良さでした。
小麦粉に水を加えて生地を捏ねる時、何パーセントまで水分を入れられるか(吸水率)、これが小麦粉の性質の一つの指標ですが、グルテン(タンパク質)の多い粉ほど吸水率が上がります。

先日のパン焼きでは、いつもの水分量では生地が固く仕上がってしまい、水を10%くらい足さなければなりませんでした。
当然これは食感にも反映され、ふくらみの良い焼き上がりになりました。

一方肝心の風味ですが、新麦らしい麦芽とフスマの香りがすぐにそれと分かるほど強く感じられました。
もちろん悪くありません。

しかしそれで改めて分かったのは、スペルト小麦がいかに素晴らしい、素敵な香りを持っているか!と言うことでした。
昨年産でも、スペルト小麦の方が風味の点では上です。

そのスペルト小麦、早や来週には籾摺り工程を終えて使用可能な状態になりますので、南部小麦のパンは今週だけの限定品となります。
ちなみに、今年のスペルト小麦は、品質も良く量も沢山穫れていますので、来年までずっと満足していただけるものと思います。

そして明日のパン焼きでは、プンパニッケルが新麦仕様になります。
食工房畑のライ麦100%です。
この後追って、堅焼き黒パン、ライ麦入り角食パンも新麦仕様になりますので、どうぞお楽しみに。

明日も、皆さまのご来店を、お待ちしております。

日差しが戻って来ました

どうやらこのまま梅雨明けに向かうようです。
今日あたりは、雲が切れて青空が覗きました。

そして強い日差しが差して来ると、言わずもがな暑さ!ですね。

今日は、焼き上がったパンが覚めるのに時間がかかり、出荷に間に合うかどうかギリギリでした。
粗熱が取れたところで、低温にしたドゥコンディショナーにパンを入れて冷却するという荒業に頼らざるを得ませんでした。

パン生地も、工程により冷却状態になっている時間もありました。

ドゥコンディショナー、本当にいい働きしてます。

それから、南部小麦のパンですが、生地の状態、焼き上がり、すべて期待以上のものがありましたが、味見だけが今日出来なかったので、明日あらためてレビューします。