最近の食べ物に対する多くの人の好みは、いわゆる口当たりが軽く、やわらかく、なめらかで、ほとんど何の抵抗もなく喉を通って胃袋にすべり込むようなものに偏っているような気がします。
反対に、堅くてしっかり噛まないと喉を通らないものは敬遠される傾向です。
これは、この頃の私たちがやたら忙しくて、ゆっくり食べている暇がないというのも理由の一つじゃないかと思います。
ところで、ものを食べた満足感というのは、顎の筋肉を使わないと得られないそうですね。
だから、噛まないで食べるといくらでも胃袋の中に入れられるので、満足するというよりは、ただ物理的に満杯になって苦しくなったり気持ちが悪くなるまで食べてしまうわけです。
その結果肥満になるか、逆に胃腸を悪くして虚弱になるか、どちらにしてもあまりいいことはありません。
皆さんは、「噛みは、神なり」 という金言をご存知ですか?
「健康は、あごから」というのもあります。
要するに、よく噛んで食べることがどれほど大切か、ということを 言っているのですね。
顎の運動が脳を活性化するとか、背骨や足裏の土踏まずにも影響を与え、立ち姿勢が良くなるとか、そういう話をお聞きになったことがあると思います。
そうです!
だから、堅いパンをお勧めしたいのです。
ライ麦全粒粉が入っている堅焼きの黒パン。
食べ慣れないうちは、不味い(?)と思われるかも知れませんが、食べ慣れてくると、これほど何と一緒に食べても相性のいいパンは他にありません。
ふだんはご飯でも、たまにゆっくりと洋風に、黒パンとスープと(みそ汁でもOK!)、そしてチーズやワインも添えて食事を楽しむというのも、また目先が変わっていいと思いますがいかがでしょう。
「食工房のパンだより」カテゴリーアーカイブ
パン屋です。
本日は、恒例木曜日のパン焼きの日でした。
明日は、毎月一回、会津若松まで配達に出る日なので、沢山パンを焼きました。
おかげで忙しく、そこへかなり無理をして写真撮影をお願いしたものですから、ついに朝食は「朝飯という名のおやつ」になってしまいました。
さて、今さら何を、と言われるかもしれませんが、食工房はパン屋です。
改めて自己紹介申し上げます。
食工房は、完全自家培養の天然酵母を使い、また国産小麦粉、ライ麦全粒粉を使ってパンを中心に、マフィン、スコーン、クッキー、ケーキなど焼き菓子も製造販売しています。
他にもいろいろあるのですが、それはまた次々ご紹介申し上げるとして・・・。
食工房では店売りの他、通信販売もやっています。
どちらかと言うと、通販の方が多いくらいかも知れません。
皆さまから、お問い合わせやご注文をいただくために、いろいろ考え込んでいましたが、連絡先を公開いたします。
カテゴリー ; 食工房へご案内 の記事の中に追加掲載しています。
なおメールアドレスは、只今迷惑メールの混入で頭を痛めていますので、しばらくお待ちください。
お手紙、大歓迎です。
運動不足
パン屋商売は、一日中作業場で立ちっ放しでの仕事になります。
動かしているのは大方手先だけで、ほとんど運動にはなりません。
重いものと言えば、粉の袋が25㎏でそれ以上のものはありません。
生地を手でこねれば間違いなく良い運動になりますが、時間的猶予がなくていつも機械でやってしまいます。
そんなわけで、この商売を始めてから少しずつ運動不足が溜まって来ています。
せめて休みの日に、思い切り体を動かしたいのですが、雑用に追われていつの間にか時間が過ぎてしまいます。
最近さすがに危機感を強めた私は、ちょっとの合い間に体操をしたり呼吸法をやったりして、最低体が硬くならないよう、また酸欠で肩がこったり頭が痛くなったりしないように気をつけています。
会津に引っ越して来て4年目になりますが、まだ飯豊の山頂を踏んでいないので(途中までは行った。)、今から体力が落ちるようでは困るのです。
2004年6月の飯豊連峰
文旦ピール
今日は、マフィンとスコーンを焼きながら、また文旦ピールを造りました。
ピールの造り方もいろいろあるみたいなので、食工房のやり方を紹介します。
文旦は、他の柑橘類に比べて皮の苦みや渋みが特に強いので、下ごしらえやアク抜きに手間がかかります。
下ごしらえ
文旦の皮は、昔はとても厚みがあってワタの部分がいっぱいくっついていましたが、最近は品種が変わって大分薄くなっています。
それでもそこそこ厚みがあって、この部分に渋みや苦みがありますので、ナイフで一層剥がします。
この作業をやりやすくするために、皮を剥く時から一工夫しておきます。
先ず、八つ割りに切り込みを入れて、形が目茶苦茶にならないようきれいに皮を剥きます。
下ごしらえの済んだ皮は、すぐに加工しない場合は数時間乾燥させてから袋に入れて冷蔵庫で保存します。
アク抜き
ある程度皮が溜まってピールを造ることになったら、乾いた状態で重量を計っておきます。
それからさっと水で濯いで、容量に余裕のある鍋にたっぷりの水と一緒に入れます。
火にかけて加熱し、70℃になったら火力を調節して70℃をキープしながら1時間熱水浴します。
皮は浮き上がりますので、押し蓋をして全部が湯の中に浸るようにします。
柑橘類の香り成分は揮発性の高いオイルなので、沸騰させて茹でこぼすと大分損なわれてしまいます。
70℃は、香りが飛ばず渋みと苦みだけが抜けるちょうどよい温度です。
それが終わったらザルに引き上げ、今度は冷たい水に晒します。
二時間晒して水を替え、もう二時間水に晒してアク抜きは終了です。
ザルに上げて水を切ります。
砂糖煮
鍋にアク抜きの終わった皮を入れ、全体が十分浸って少し底から浮く位に水を注し加熱します。
砂糖は、先ほど計っておいた乾燥重量の2倍量用意します。
色がきれいに仕上がることと、文旦の香りを殺さないため、上白糖かグラニュー糖のどちらかにします。
これを、時間を追って10回くらいに分けて足し入れて行きます。
煮立って来たら火力をグッと落として弱火にし、先ず一回目の砂糖を入れます。
その後20分毎に砂糖を足しいれます。
鍋の蓋は、蒸発を妨げないように、かといって温度が下がってしまわないくらい、適当に隙間を開けておきます。
特にかき混ぜる必要はありません。
6、7時間かけてペクチンがゼリー化するまで、しっかりと砂糖分を吸収させます。
砂糖が香り成分と結合して貴重な香りを逃さなくなります。
シロップも減って来て、下手をすると焦がしてしまいますので、火力はくれぐれも強すぎないよう気をつけます。
きれいな透明感のあるあめ色になり、しっかりした感触になったら出来上がりです。
保存
そのまま自然に冷まして、粗熱が取れたらトングでつかんで二重にしたポリ袋に入れ、空気を抜いてきっちりと口を結びます。
十分冷めたら保存期間に応じて、冷蔵または冷凍で保存します。
残ったシロップもビンに入れるなどして冷蔵保存します。
一年間くらい、何の問題もなく保存可能です。
その他
お菓子造りには、必要に応じて刻んで使います。
角切り、スライス何にしても、刻んでいる時から香りの素晴らしさに感激すると思います。
シロップの方はあまり香りがしませんが、それでもいろいろ使えると思います。
砂糖菓子のようにしたい時は、粗熱の取れたピールの汁気を切って食べやすい形や大きさに刻んで、表面にたっぷりとグラニュー糖をまぶします。
そして、少し乾かしてから保存します。
ノーシュガー
砂糖なしのお菓子、自然食の業界ではずっと以前からあったのですが、最近広く知られるようになって来ました。
砂糖なしとは言っても、甘さなしと言うわけではありません。
レーズンなど、ドライフルーツを使ったり、メープルシロップを使ったりして、ほど良い自然な甘味を出しています。
低カロリーでミネラル分の豊富なヘルシーメニューとして、ノーシュガーのお菓子は静かなブームを呼んでいます。
一方、製造する側にとっては、ノーシュガーのお菓子はごまかしが効かなくて難しいと言えます。
小麦粉でも油脂でも素材の味が良く分かるので、グレードの高い材料を使わなくては満足なものが出来ません。
食感の点でも、生地の膨らみが悪くその上日時の経過とともに急激に食感が悪くなります。
でも、アレルギー体質の方のニーズや健康志向の方のニーズで、ノーシュガーのお菓子はこれからますます注目されると思っています。
シマリス君の朝ごはん
ペットフーズではありません。
レーズンとミックスナッツを入れたノーシュガーのマフィンです。
木の実をかじるシマリスが好きそうな、と勝手に連想してつけた名前です。
BP(ベーキングパウダー)を使わず、重曹とりんご酢で膨らませています。
卵もミルクも入りません。
自家用に造っていた頃から通算すると、もう24年間も造り続けています。
一頃大方一年間くらい、昼食は毎日「シマリス」ということもありました。
自家用には、レーズンやナッツがもったいないというので、サツマイモの角切りを入れて増量したのが「いもリス」、たまに小豆あんを入れた「あんリス」も登場しました。
いつまで経っても飽きの来ない味で、今でも好んで食べています。
そんなわけで、いつの間にか食工房のマフィンは皆「○○リス」と名づけられることになったのでした。
写真は、「シマリス君の朝ごはん」略して「シマリス」、三文字で「シマリ」と呼ぶ人もいました。
余り生地のバタール
本日の食工房
今日は木曜日、やっぱり忙しいパン焼きの日になりました。
ブログを書く暇がないかも知れないと思いましたが、配達が早く終わりましたので、ちょっとの合い間にデスクに向かっています。
余り生地のバタール
食パンを造る時、いつも少し生地が残ります。
定番品の三種類の食パン生地の残りを合わせるとそこそこの量になりますので、何とかしなくてはいけないと思って造り始めたのが「余り生地のバタール」です。
そういうわけで「余り生地のバタール」は、厳密に言うと毎回中身が違っています。
と言っても、ライ麦全粒粉の割合が少し増減するだけなのですが、色合いや食感が違うことにすでにお気づきの方もいらっしゃると思います。
ところが最近、「余り生地のバタール」のご注文が増えて、余り生地だけでは間に合わないことがあるのです。
今日はとうとう、そのためにわざわざ生地をこねることになりました。
嬉しいことではあるのですが、これがいつものことになるともう「余り生地の・・・」ではなくなりますね。
でも、何となく気を引かれる「余り生地の・・・」、名前はやっぱり残そうかなと思います。
今度は、余り生地の・何、を造りましょうか。
頭をひねっているところです。
食工房の裏ワザ
スパイスワークの楽しみ
食工房の焼き菓子類には、スパイスを好んで使っています。
ことさらスパイスの名前を冠していませんが、ほとんどの製品にスパイスが入っています。
焦げ味に深みを与えるために、控えめな糖分でも甘さを楽しめるように、焼くことで失われる香りを補うために、素材の風味を強調したり逆にクセを和らげたりするために、スパイスワークにはいろいろな目的があります。
「何だか分からないけれどいい香りがして気になる。」そんな効果を演出することが、食工房のスパイスワークの先ず一番の目的です。
そのため例えば、度が過ぎるとまるで台無しになってしまうようなクセの強いスパイスを、粉1㎏に対して耳掻き1杯など、とてもデリケートなレシピになっています。
私とスパイスの付き合いは、実は私が20代の頃から始まっています。
その頃は趣味でカレースパイスのブレンドを試していました。
それまでカレーが複数のスパイスの調合品であることも知らなかった私は、いろいろなスパイスが合わさることで、魔法のように新しい風味が生まれることに、すっかり興味をさらわれてしまったのでした。
その頃からずっと、練りに練った私のオリジナルレシピのカリーマサラは、今、食工房のメニューの一つとなって皆さんに喜んでいただいています。
どろんこクッキー
本日はの焼き仕事は、「どろんこクッキー」。
無加糖のカカオマスのフレークとミックスナッツとラムレーズンが入っているクッキーです。ここにも、スパイスの粒を包丁で刻んだものが入っています。
スコーン
毎週金曜日は、たいていマフィンとスコーンを焼いています。
パンと違って醗酵時間がないので、朝もゆっくり始まります。
でも一旦始まると、すごい緊張感で作業します。
そのわけは・・・。
重曹と酢を使って生地を膨らませるやり方を採用しているからです。
ベーキングパウダー(BP)を使えばいいところなんですが、BPは成分中にアルミニウム塩を含むので使いたくありません。
アルミニウム塩は、脳に蓄積されてアルツハイマー症候群の原因になることが確認されています。
アルミフリーのBPもありますが、BPは加熱が始まってから効いて来るので、焼き菓子では理想の食感にならないのです。
重曹と酢を使うやり方だと、材料を合わせた時点から効き始めていますので、焦げ目が付いて固まってくる前に十分膨らみます。
その代わり、作業を手早くしないと焼く前に反応が終わってしまい、うまく膨らまないまま焼き上がってしまいます。
そこで、少しでも反応時間を稼ぐために、材料は全て前の日から冷凍庫、冷蔵庫で冷やしておきます。
昨日、「明日の準備」と言ったのは、実はこの事だったんです。
そして今日も、写真撮影をしてもらいました。
ちなみに、重曹と酢の使用割合は
粉100gに対し、重曹1g 酢10ccです。
あらかじめ、重曹は粉の方に、酢は水の方に混ぜておいてから合わせるようにします。
※重曹とヨーグルトを使う方法もあります。
本日の食工房 2007.4.2
文旦ピールづくり
今日は、クッキーを2種類焼きながら、同時進行でお菓子の材料に使う「文旦ピール」を造っています。
文旦は柑橘類の一つで、私の生まれ故郷の土佐の特産品です。
製菓材料には、オレンジピールやレモンピールがよく使われますが、文旦は香りの良さではこの二つよりずっと上だと思っています。
それに、既製品のピールは高速のカッターで、先に刻んでから煮ていると思われ、刻まれた切り口や糖分の浸透の具合など、仕上がりに満足の行くものが見つかりません。
そんなわけで、実はすでに昨日から下準備をしています。
アク抜きのために、熱水浴1時間、水晒し2時間を2回、そこまでやって一晩ザルに上げて水分を切っておきました。
今日は、まずたっぷりの水と一緒に加熱、煮立ったら砂糖を小刻みに時間を追って入れて行きます。
仕上がりまでに約7時間余り、きれいに半透明になった文旦ピールが出来上がります。
ピールとシロップは分けて別々に保存しておき、それぞれの用途に使います。
まず一番は、文旦ピール入りのマフィンに、それからクリスマスシーズンにシュトレンの中にも使われます。
使うその時になってから、良く研いだ包丁で刻みますので、香りがいいというわけです。
おかげさまで今日は、朝から作業場に文旦の香りがいっぱいに広がって気分良く仕事をしています。