食物環境という話

食品の偽装や毒物の混入など、食物の安全が揺らぐ昨今、一体何を食べればいいのか、食の安心はどこに求めればいいのか、どなたも頭を悩ませていらっしゃると思います。

そういった危険回避のことは、この時代の重大事になってしまいましたが、それ以前から、健康維持を考える時、毎日食べる食物は一つの重要な要素でありました。
「何喰ってたって同じだよ!」と思っている方がいるかどうか知りませんが、はっきり言ってそれは間違いです。

我々人間も含めて、動物も植物も皆、直接間接に環境の産物です。
食べるということは、肉か魚かあるいは野菜かその他何でも、それらが採れた場所の環境を体の中に取り込むことと同じです。
食生活は、その人の体にとって、ある面、気候風土以上に直接的な環境だと言えます。

「じゃあ、何を食べるのが体に良くて、何が体に悪いんだ?」ということになるわけですが、それは人それぞれに少しずつ違っているということもありますし、それから食品商売をしている私の立場上、特定の食品の悪口になることは言いたくありませんので、ここでは具体的なことは申し上げられません。

私の限られた経験からでも、個々の食品と体への影響について、つかんでいることはいくつかありますが、それらは直接お話しする機会があれば、お伝え出来ると思っています。
一つ言えることは、どんな食べ物にも適量があって、不足しても多過ぎても、健康に何らかの害があるということです。

今、私たちの回りに氾濫している食に関する情報や飽くことなき美食への志向のことなどを考え合わせると、私たちはただ贅沢なだけに止まらず、それ以上に心身の健康に対して、とても罪深い状況であると思います。

そんな時代に、パン屋をやっている自分としては、食べてくださる皆さんの体にもそして心にも良いパンを提供したい。
そのためには、体のことも心のことも全て含めて、まず自分自身のコンディションからだと思っています。
無理に達観するんじゃなくて、自然に仕事が喜びとなるだけの力量を身に付けることが肝心と、この歳になってやっと覚悟が決まった私です。