虫の声

忙しい一日が終わりました。
夕食の後、オーブンの余熱を冷ますために、店の戸を開け放して換気をしていました。
虫が飛び込んで来るので、明かりは消しています。

今夜は雲が出て来たようで、星があまり見えません。
戸口で番をしながら涼んでいると、虫の声が聴こえて来ました。
通る車もなく、うちの換気扇以外に物音はありませんから、遠くに近くに沢山の虫の声が聴こえます。

思い立って、畑の方まで歩いてみました。
鳴いている虫の種類が、場所によって少しずつ違うみたいです。
草取りが遅れて藪になってしまった一角で、邯鄲(カンタン)の鳴き声がしていました。
秋の虫の声で印象に残るのは、この邯鄲とウマオイです。
背景のようにずっと持続していてどこで鳴いているのか、あたりを満たしているのが邯鄲の声。
そこへ「スィーッチョン、スィーッチョン」と、強烈にアクセントを付けているのがウマオイです。
コオロギやその他いろいろ、とてもにぎやかです。

でも、私の子どもの頃の記憶とは、だいぶ感じが違います。
高知と東北では無理もありませんが、こちらではクツワムシとマツムシの声を聴いたことがありません。
スズムシの声も聴こえません。
もっとも、この家の周りしか確かめていませんけど。
昔に比べて、虫の種類や数も減っているのじゃないか・・・、今度地元の人にたずねてみようと思っています。


それはそれとして。
夜寝床に入って眠りに就こうとする時、床下からコオロギの声が聴こえて来ると、私は、子どもの頃同じように布団の中でコオロギの声を聴きながら眠りに就いたことを思い出します。
私にとって、どうやらそれは安心の記憶のようです。
布団の中で虫の声を聴いていると、本当に幸せな気分になってよく眠れるのです。