パン屋志望の女性たち



ここ20年余の流れとして、女性がパン屋を開業する例が増えています。
私の知り合いでも、パン屋をやっている女性が沢山います。
そして最近でも、これからパン屋を始めたいと思っている女性に、次々と出会っています。
何故、女たちはそんなにパン屋になりたいと思うのでしょうね。
実際にパン屋に修行に入ったり、アルバイトしたりする中で、例えば25kgの粉袋を、「これを持ち上げられないようじゃパン屋はつとまらないよ!」などと厳しいことを言われても、大抵はめげるどころかかえってやる気を出して、後々本当にパン屋を開業してしまった女性たちがいっぱいいるのです。
そして、彼女たちの活躍と天然酵母パンの普及は、密接に関連していて、日本で天然酵母パンを広めたのは、こうしてパン屋を始めた女性たちだと言っても過言ではありません。
我が福島県の中で、私が知っている天然酵母のパンのお店は、只一軒を除いてあとは全部女性がやっています。
その他、郷里の高知県でも、市内や郡部のあちこちで、極めつけは私の生まれ故郷で、それも信じられないような山奥で、東京のル・ヴァンで修行した女性がパン屋をやっています。
そしてこうした女たちのパン屋は、いわゆる業界で修行した人もいれば、素人の独学で鍛え上げた人もいたりして、必ずしもパン屋業界の常識にはまらない奔放なやり方で経営していることが多いのですね。
かく言う私の食工房も、業界の中では変り種的パン屋です。
ところで、こうやって天然酵母パンのファンを増やして来た、我々の努力の成果のみを、大資本パンメーカーに乗っ取られてしまうなんてことがないとは言えませんね。
そうならないためには、単なる利潤追求のスタンスでは取り組めない質の高い仕事を、自分の喜びとしてやれる心がまえが何より大切と思います。
「パン屋は、街をたがやす百姓。」といった人がいるのですが、面白い言葉ですね。
たがやした後にまくのは、「健康」の種ですね。
食工房もそんな仕事をしたいと思って、毎日パンやお菓子を焼いています。