デジタル時代に想うこと

情報処理がデジタル化したことで、何が一番のメリットでしょうか。

それは、一つは情報を劣化させることなく複製を作れることです。
もう一つは、音楽のような時間の経過を伴う情報から時間を切り離せること。
これらにより、今までとは比べ物にならないほど大量の情報の処理が可能になりました。

どなたもご存じのように、好きな音楽をコピーしたければ、実際に聴いて楽しむ時間の数分の一か数十分の一の時間で出来ますね。
画像もデジタル化によって、紙に印刷しなくても情報として電子的に処理出来ます。
汚れたり劣化したりする心配もありません。
修正や効果を加えることも、アナログとは比較にならないほど容易に、しかもダイナミックに可能です。

さて、そんなデジタルの時代になって、何もかも良いことずくめでしょうか。

「コピペ文化」・・・、お聞きになったことがあると思います。
あふれる情報の中から、気に入ったものをコピーしてアレンジだけ考えて貼り合わせ、自分の製作品のように見せることを言ってますね。
世の中には今、コピペ支援の情報がいっぱいです。

テンプレート・・・、ご存知ですね。
自分の頭で一から考えなくても、そこそこの半製品があって、それにちよっと手を加えるだけで、それらしくオリジナルが出来るのですね。
ホームページでもブログでもツールは満載、より取り見取りです。

結果として、クリエイティブな仕事が激減していると思います。
本当に創造的な仕事をしているのは、極々一部の人だけでしょう。

その結果、リソース(原資)と言えるものが貧弱になりつつあります。
何を見ても聞いても、創造性を感じない・・・。

行き交う情報の量が激増するのとは逆に、情報の中身はどんどん貧弱になっているのではないでしょうか。
結局私たちは、それほど多くを必要としているわけではない、ということなのじゃないかと思っています。

ところで手前味噌になりますが、いつもご覧いただいている「食工房のパンだより」、イラストは全て描き下ろしです。
似たようなものが何度も出て来ているようでも、毎回新しく描いています。

テキストのレイアウトも、最初から全部作っています。

否、それが当たり前でしょ!って思うのです。

今還暦を過ぎた私たちの世代は、その昔、ロウ原紙に鉄筆で原版を刻んでいたのですから。
自分の手が仕事しなかったら、何も生み出すことが出来ない・・・。

それが・・・、デジタルの時代には、ちょっと様子が違って来たのですね。

果たして、これが本当に豊かってことなのかどうか、ようく考えてみたいと思う私です。

そして、子どもたちに、孫たちに、何を伝え残すべきかと・・・。