食工房のパンだより」カテゴリーアーカイブ

国産小麦100%

食工房のパンと焼き菓子に使用している小麦粉は、100%国産小麦粉です。
国産小麦は、パンづくりには適さないと言われ価格も高いので、国産小麦粉を使うパン屋は本当に少数派です。
現在、日本の小麦自給率は10%台で、ほとんどを輸入に頼っています。
そんな中、輸入の際船積み時に使用されるポスハーベスト農薬が、最終製品であるパンの中に残留していたことがあり問題になりました。
また、米と並んで主食として重要な地位にある小麦の自給率がこれほど低いのは、食料政策上明らかに良くないことじゃないでしょうか。
国産小麦は、グルテン度が低くて生地にコシがなく、膨らみが悪いとか食感が悪いとか、いろいろなことを言われるのですが、風味という点では絶対に輸入小麦の追従を許さない優秀さがあると、私は思っています。
食工房では、岩手県産の「南部小麦」と「ゆきちから」の二種類の小麦粉を使っていますが、例えば食パンではモチモチとした弾力のある食感が好ましいと思いますし、しっかり中身が詰まっていて食べた時に満足の行く質量感があり、そして小麦という穀物のおいしさを味わうことが出来ます。
皆さんが、もっもっと国産小麦を評価していただけるよう、本当においしいと言われるようなパンを造るために、毎日努力しています。
 


地粉角食パン

「地粉」とは、内地つまり国内産の小麦の粉という意味です。
酵母種も生地も同じ小麦粉で造りますので、正真正銘国産小麦粉100%のパンです。
通常食パンに使用される油脂分も入れていません。
東北の穀物のおいしさがストレートに味わえるこの食パンは、和食洋食を問わずどんな惣菜、汁物と一緒でもおいしく召し上がれます。

カレンツとクルミ入りスコーン



食工房のスコーンは現在二種類あります。
一つは、前に紹介したバターとミルク味のプレーンスコーン、そしてもう一つがカレンツとクルミ入りスコーンです。
カレンツは、レーズンよりもずっと小粒のドライフルーツで、スグリの一種です。
レーズンより甘味、酸味ともに濃厚で、とてもおいしいドライフルーツです。
クルミは、一度軽くローストして渋皮を飛ばし、フードプロセッサーで粗砕きしています。
面白いのは、重曹と酢を使う手法でやると、重曹の働きでクルミの渋がきれいに抜けてくれることです。
とてもやわらかい味になります。
油脂分は、バターを使用せず、オリーブ油(バージンオイル)と菜種サラダ油を使っています。
卵もミルクも使いませんので、このスコーンは植物性でノンアレルギー仕様になっています。
ところで、このところ気温が上がって来て、作業場が暑いくらいになって来ました。
こうなると、重曹と酢の反応速度が速くなるので、生地を仕込む時はものすごく時間に追われます。
今はまだいいのですがもう少しすると、生地が触れる道具や作業台もすべて氷を使って冷却しなくてはなりません。
パイルームなどの設備が整っていれば言うことはありませんが、うちの今の状態では全く望みようもないことです。
まあそれでも、もう三度も暑い夏をこうして乗り切って来ていますから、この夏もスコーンの出来が悪くなることはないでしょう。
カレンツとクルミ入りスコーンは味が濃厚なので、ハーブティーとすごくいい相性です。
もちろんコーヒーでもいいのですが。
ちなみに、カレンツ入りのスコーン、クルミ入りのスコーン、それぞれいくつか見かけましたが、両方入ったのはありませんでしたね。
食工房オリジナルです。

やっぱり忙しい木曜日



定休日明けということもあって、どうしても木曜日に仕事が集中してしまいます。
最近はそれが一週間のリズムになっていますので、水曜日の午後当たりからしだいにテンションが上がって来ます。
明日は、月一の会津若松方面に配達の日なので、今日はなおさらでした。
早朝にトースト一枚とコーヒーを腹に入れただけで、とうとう夜まで食事が出来ませんでした。
オーブンの余熱で暑いので、今日はやたらにのどが渇いて水をガブガブ飲んでいました。
それでも体が動くことはありがたいです。
ちょっと配達にも出ましたので外の空気も吸えたし、もう少し残っている明日の準備を終えれば今日も終わりです。
今日は、忙しかった自分に癒しの一枚を選んでみました。

プンパニッケル



プンパニッケルは、ドイツの伝統的なパンの一つです。
ライ麦の全粒粉に酵母とヨーグルトを加えて発酵させた、ザワータイク(ライサワー種)と呼ばれるパン種を使って生地をこねます。
このパンは、酸味があるのが身上で、ドイツの方はどうか知りませんが、日本人の私たちの間では極端に好みが分かれるパンです。
だからこのパンをつくっているパン屋さんは、そう沢山はいないのです。
増してや人口の少ない田舎では、買ってくださる方はなおさら少数派になりますから、当店でこのパンをつくっているのは、他ならぬ私と家族の者が食べるからです。
とは言え、たとえ少数でも熱心なファンは必ずいらっしゃいますので、その方々のためにも手堅く続けて行くつもりです。

 プンパニッケルのおいしい召し上がり方
薄く切ってそのままか、軽く焙ってお召し上がりください。
バターやクリームチーズ、あるいはカマンベールチーズが大変良く合います。
スモークサーモン、ベーコンなど燻製品もOK。
また、レバーペーストやブルーチーズなどクセの強い材料とも相性がよろしいです。
それから、シソ味噌がとてもいいマッチングでおすすめです。
(当店のお客様の発案で、試食会でも好評でした。)
飲み物は、スープがあれば最高ですが、ハーブティーやミルクをアレンジした飲み物、プレーンヨーグルトとフルーツソースなんかも合います。
そして、アルコールなら赤ワインをお試しください。

もう一つ余談ですが、プンパニッケルは食物繊維を大量に含む、スーパーダイエットメニューです。

ブラウニー



以前から、うちのかみさんが「ブラウニーを造ったらいい!」と何度も繰り返すものですから、そんならと思い先ずはネット検索でいろいろ調べました。
そうしたら、ブラウニーという名のお菓子はいっぱいあって、チョコレートまたはココアを使うということ以外はほとんど何でもありなんですね。
だったら、「食工房のブラウニー」を勝手にでっち上げればいいということになるわけですが、その前に、食工房にはお菓子好きのご常連でアメリカ出身の方がいらっしやいますので、ブラウニー好きのアメリカ人のお話しを伺いました。
それによると、ブラウニーには大まかに二種類あって、一つはカカオマスの割合が多い、硬さのある正統派ブラウニーとあと一つはファッジという別名で呼ばれる、ココアパウダーやバター、粉などの割合が多い、軟らかいケーキタイプのもの、どちらもそれぞれファンがいるとか・・・。
で、食工房ならどちらか?やっぱり正統派で行きたいわけですよ。
なおかつオリジナリティーも出したいし、そこで頭をひねり試作を重ねた結果、食工房自慢の文旦ピールを入れたものが完成しました。
当然、スパイスワークも一工夫しています。
いつも、良い香りは上等なお菓子の生命だと考えていますから、これはレシピを練る時の一番の楽しみなんです。
さて、モノは完成しましたので、今度はかみさんにパッケージラベルのデザインを考えていただきましょう。
すでに「パンだより」にも告知しましたので、早々とご注文もいただいています。
定休日明けのあさってには、正式発売にこぎつけられそうです。

自ビール

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こどもの日の話題にはふさわしくありませんが・・・。
天然酵母を自家培養していると、必然的に興味を誘われるのが酒造りです。

パン用の酵母も酒造用の酵母も、元は同じものです。
アルコール発酵しながら炭酸ガスを発生する性質を持っています。

パン種を培養していると、微量のアルコールが精製されて来る感じがよく分かります。
「ひょっとして、これで酒が造れる?」と素朴な好奇心がわき起こるのを止めることは出来ませんよね。

で、私もいろいろやって見ました。
これまでに上手く行ったのは、カシス(黒すぐり)のワインとビールです。
カシスのワインの方は最近ちょっとお休みしていますが、ビールはなくなると次のを仕込むという間隔で続けています。

本当はモルトづくりからやってみたいところですが、まだそこまで時間的余裕がないので、市販のビールキットを使用しています。
付属のイーストは使用せず、我が阿武隈・飯豊酵母の登場です。

天然酵母仕込だと、微妙に酸味が出たりするのですが、これが旨いと思えるのは私だけではないようです。
もっとも、ボトリングしてから半年も置いておくと、すっかり酸味が消えて、やわらかく且つ濃厚な風味に変わっていたのには驚きましたね。

写真のビールは、ブラックロック製モルト・マイナースタウトをオールモルトで仕込んだもの。
昨年8月に仕込んで、10月に「奥会津アイリッシュコンサート」が催された折、アイルランドから来日したミュージシャン、ショーン・ライアンにご馳走したところ、パスチャライズ(火入れ殺菌)する前の時代のギネスの味がするとの評価。
ミュージシャンが、こんな専門的な評価に及ぶとは思いませんでした。
まあ、褒められたということでしょうか。

他に、チェコピルスナー、レッドエールも試しています。

ところで、私はアルコール過敏体質なので、せっかく造っても少ししか飲めません。
大方はおみやげに差し上げています。
夏までにはまた仕込んで置いて、皆さんに楽しんでいただこうかなと思っています。


本日の食工房

今日もあちこちからお客様が見えました。
そして今シーズン初めて、アイスコーヒーのオーダーがありました。
これから初夏へと季節はどんどん進んで行きます。
来週末あたりから、この辺でも田植えのシーズンになります。

阿武隈・飯豊酵母



食工房で使用している酵母は、完全自家培養天然酵母です。
「阿武隈・飯豊酵母」の名の由来は、今から17年前に阿武隈山中の沢水から酵母種を起こしたことに始まります。
それから14年間毎週一回、たまに休んだ時を考慮しても700回余り継ぎ種培養して来ました。
「継ぎ種」というのは、「かけ継ぎ」とも「老麺法」とも言いますが、元の種を全部使い切らずに残し、新たに材料を加えて再び増殖活性化しながら、繰り返し使い続けて行く方法です。
西洋でも「サワードゥー」の名でよく知られた方法です。
阿武隈山中では、ずっと同じ沢の水を直接使い続けましたので、季節季節に様々な状態の酵母菌や乳酸菌が混ざり合って、複雑な風味を生み出していました。
雑菌の混入も免れなかったと思いますが、培養の段階で乳酸菌が生成する酸と酵母菌が生成するアルコールによってほぼ完璧に死滅させられるので、まずそんな心配をしたことはありません。
会津で正式にパン屋を始めてからは、水道水を使うようになりましたが、年に1回は飯豊の麓まで出かけて山の水を汲んで来て入れます。
こちらでも3年間に毎週2回ずつ、すでに150回以上継ぎ種しています。
これが「阿武隈・飯豊酵母」の由来です。
ところで、酵母は大変デリケートな生物で、別な強い種が入ると今までの種が淘汰されてしまうこともあり得ますので、イーストも含め他の酵母は一切使わないよう、作業場に持ち込まないよう気をつけています。
これまでの17年間に、2回ほど危うく絶えさせる寸前の危機に遭遇しましたが、奇跡的に回復し現在に至っています。
また、別に半年間冷凍した種を再培養して耐冷テストもやりましたが、問題なく再生するタフさを見せてくれました。
おかげさまでもうずっと以前から、自分のパンの風味は変わることなく、いつ食べてもすぐにそれと分かる個性を保ち続けています。


      飯豊山食パン 1斤
 
 本日の食工房
今日は連休後半初日、この時期毎年、千葉県から訪ねて来てくださるご家族が、やはり今年もいらしてくださいました。
他にも一年ぶりという方が、去年買っておいしかったからと、いらっしゃるなりすぐにお目当ての品を手に取られ、これは本当にうれしかったですね。
皆様のこうした情熱に支えられて元気を出しています。
来年またご来店いただいた時も、変わらず店を開けていられるようがんばります。

カフェクラブの集い ケーキ3種類

今日は、カフェクラブのイベントを予定していましたが、参加のご連絡がありませんでしたので、流会ということにしてケーキを3種類焼くことにして作業を始めました。
一つ目を終えて二つ目にかかろうという時、使っていたミルミキサーから異音がして突然の故障!
おまけに重要な材料が一つないことに気づき、急遽作業を中断して買い出しに走りました。
ホームセンターで特価品のミルミキサーを1台1,980円で購入。
いくら何でもこんな値段でいいの?メーカーが気の毒に思えるほどでしたが、この急場をしのぐにはありがたい計らいでした。
それから、生乳100%のヨーグルトを見つけに生協に走り、売り切れ寸前の2個を買い占めて大急ぎで帰って来ました。
おかげさまで夕方までには無事作業終了。

店は、本日もまた思いがけないお客様のお出でをたまわりました。
昨日の東京の方が、ホテルで一泊の後、帰る前にもう一度立ち寄ってくださいました。
それから、遠く仙台からご家族連れの方が見えました。
それも本当に偶然に前を通りかかって、パン屋だと気づき立ち寄ったとのこと、パン好きのご家族で、喜んでいただけて、やっぱりこの仕事をしていて良かったと思うことしきりでした。
その後、Merry Landの編集長さんと同居人のヤッさんがカフェクラブめざしてご来店くださったので、流会のはずでしたが私も休憩して一緒にコーヒーをいただきました。
明日はまたどなたがお見えになるでしょうか。
食工房は明日も変わらず営業しております。

ちなみに3種類のケーキは、
エルフの焼き菓子・アールグレー ティーケーキ・アプリコットケーキでした。
いずれ詳しくご紹介申し上げます。

パン屋、のちコーヒー屋、そしてブロッガー

本日は全くいろいろなことをやりました。
と言ってもいつものことなんですが、どうしても一つのことに絞り切れない性格が、わざわいか幸いか知りませんが、して、ついつい色々なことに手を出してしまう私です。
おかげさまで、ある時は楽しく、またある時は自分を呪いながら、全く忙しい人生です。
今日は、午前中はスコーンとジンジャークッキーを焼き、昼の合い間に明日のパン焼きに備えて酵母を起こし、午後からはコーヒー豆の焙煎をやりました。
ちょっとした時間の隙間にPCの前に座り、来月の「パンだより」の編集も。
コーヒー焙煎が終わったところで一息入れ、明日のパン焼き用に粉を計量して本日の作業が終了となりました。
そして今またPCの前に座ってブログ書きをしているというわけです。
本当は、今日のネタは頭の中では出来上がっていたのですが、古い写真が見つからなかったし、長くもなりそうだったので止めました。
さて明日からゴールデンウィーク、普段なかなか来られない方が、思いがけなくひょっこりと顔を見せてくださったりしますので、私は店を開けて楽しみにお待ち申し上げております。

古いオーブン



写真のオーブン、只今食工房で現役です。
佐々木製作所1981年4月製とありますから、もう25年も経っています。
資金もろくに用意出来ずに始めたパン屋なので、設備は全部中古です。
ところが運の良いことにパン屋を廃業した方がいて、いらなくなった機械設備をまるごと譲っていただきました。
このオーブンもその中の一つです。
古いものですが、至って調子よく使っています。
ただ、製造メーカーはもうとっくに廃業してしまっていますので、メンテナンスサポートしてくれるところはどこにもありません。
それがちょっと不安といえば不安、いや、かなり不安かも・・・。
とにかく毎日、故障しないことを祈ってから電源を入れています。
写真では分かりにくいかも知れませんが、このオーブン、温度調節は自動ではありません。
手動式の切り替えスイッチを操作して、ヒーターの出力を加減して温度を調節します。
大きなスイッチハンドルが、いかにもレトロな感じで私は気に入っています。
庫内の温度は温度計が付いていて大体は分かりますが、あまり正確ではないようなので、必ず実際に手を突っ込んで勘をはたらかせて測ります。
このオーブンで、庫内温度とヒーター温度を使い分けながら、何でも思い通りに焼けるようになるまでに2年はかかりました。
でもおかげさまで、ものすごくいい勉強を沢山させてもらいました。
物が焼けるためにどんな熱が必要かということを学びましたので、今ならどんなオーブンに触っても大丈夫です。
もっとも買い換える気も、資金も、どっちもありませんが・・・。
昔のモノは丈夫、の手本のようなこのオーブンが壊れたら、その時は私がパン屋を止める時だと思っています。