また一つ情報発信の話しを聞いてください。
今度は、その昔私が放送局のまねごとをやったというお話しです。
もう、今から40年も前のことです。
当時、私は工業高専の学生でした。
ご存知の方もいると思いますが、高専は全5学年の内1、2年生が全寮制です。
3年生以上は自由選択ですが、寮に残る学生もけっこう多く、総勢400人余りの学生たちが寄宿生活をしていました。
さて、工科系の学生なら、送信機を作るくらい朝めし前というわけで、一時簡易ワイヤレスマイクが流行りました。
携帯電話なんて、誰も思いつきもしない時代のことです。
送信機は、AMラジオ放送の周波数帯を使うものでしたから、受信は、誰でも皆1台持っていたトランジスタラジオでOKでした。
寮の部屋同士で無線通信で会話出来るのが面白くて、私も1台作りました。
そして、やがて皆の興味が冷めた頃、私は、この送信機を使って放送局のまねごとをやってみることを思いつきました。
気の置ける友人と二人で組んで、誰がやっているか絶対にバレないようにやろうという申し合わせでした。
と言うのは、この送信機、違法と言うほど強い電波が出るものではありませんでしたが、電波管理局という所がいかにも厳しく恐ろしい機関だと聞き及んでいたことと、どこでやっているか分からない方が面白いというのが、その理由でした。
私の送信機は、皆のと違ってマイクの他にライン入力をミキシング出来るように作ってありましたので、ターンテーブルを用意してレコードをかけながらおしゃべりすることが出来ました。
さてこの放送、リスナーは当然寮生仲間です。
いろいろ工夫して、放送エリアは4棟あった宿舎全てをカバーしていました。
でも、こっそり始めた放送を知ってもらわなければなりません。
寮の管理と指導のために、毎日入れ替わりやって来る教官にだけは、絶対に知られたくなかったので、私は各棟の入口付近にある掲示板(黒板)にチョークで、例えば次のように記しておきました。 JOKE 11:00PM~1:00AM 1620kHz
初めのうちは皆、何のことだか分からなかったみたいですが、間もなく認知されて少しはリスナーがいるらしいことが分かって来ました。
ちなみにJOKEというのは、私と友人で勝手につけたコールサインです。
まさにジョーク(JOKE)でやっている放送局ですからね。
どこかに本物のJOKEがあったのかも知れませんが、そんなことはおかまいなしです。
そして用心のために(?)、時々放送周波数も変えていました。
ところで、かけるレコードはどうしたかと言うと、自分が持っているものは限られていますから、何人もの友人から借りまくっていました。
先輩の一人が、ヒットパレードもののシングル盤を何百枚も揃えていて協力してくれましたので、リクエストも募ることにしました。
掲示板の下に、目立たないくらいの小さな箱を置いて、その中にリクエストカードを入れてもらい、毎日回収して回りました。
まあ、一部の者だけだったかも知れませんが、この遊びに乗ってくれているらしく、私と友人は毎晩、他愛もないことを好き勝手にしゃべってはレコードをかけていました。
そしてもう一つ実用的サービスとして、FM放送の音楽番組をAMに変換して放送していました。
当時は、FM放送が始まって間もない頃でしたが、AMでやっていた音楽番組が次々とFMに移行して聴けなくなっていました。
FMの聴けるラジオは、学生の間ではまだ珍しいものでした。
こちらの方はけっこう重宝がられて、やりがいを感じると言うと大げさですが、密かに得意満面でした。
さて、このステーションJOKEも、数ヶ月やったところでやっぱり教官にバレてしまい、中止に追い込まれてしまいました。
あれから40年経って、今、あちこちに小さな街のFM放送局が出来ています。
もちろんこちらは正式なものですが、私のあの遊びは、その原点だと思っています。
そして、ブログなどインターネットを使った情報発信は、出版と放送の一部の要素を兼ね備えた手法であることにも気づいています。
ここで私が思い描く情報発信とコミュニケーションの「場」を紹介しておきます。
それは、カフェと小さな出版社(あるいは新聞社)と放送局が密接に関わりあいながら同居している、というものです。
どうでしょう、近い将来必ずどこかに現れそうだと思いますが・・・。
今日は、長々とお付き合いありがとうございました。
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