稲穂の海を眺めていると、
この稔りのどこに罪があると言うのか、
そんな気持ちにさせられます。
最近ネット上で、武田邦彦・中央大学教授の発言が、物議を醸しています。
もうすでに多くの方がご存じの事と思います。
実は私、問題のテレビでの発言の詳細については、まだ見ていませんので承知していません。
そこで、湧き起こった物議の方を見ているわけですが、いろいろ思うところがありますので、書き記しておくことにしました。
3月の原発事故勃発以来、私はこの武田先生のブログはずっと参考にしています。
例えば、一般公衆の年間被ばく限度量が1ミリシーベルトであることが、どのようにして決められたどの程度の拘束力を持つものかなどについての詳しい解説は、筋が通っていて分かりやすいものでした。
また当初、保安院の危機対応のまずさを指摘したり、東電の無責任を糾弾したり、国が暫定的に福島県での被ばく限度量を年間20mSvに引き上げたことへの批判なども、読んでいていちいち頷けるものでした。
ただこの先生の悪いところは、言葉の選び方が恐ろしく乱暴だということです。
また誤記も多く、たいていは間違いだと分かるのですが、誤解が生まれる要因満載です。
例えば私は、この先生が口ぐせのように「福島の牛乳や野菜は、買わない方が良いでしょう。」と書かれているのを読みながら、ずっと釈然としないものを感じていました。
年間被ばく線量が1mSvを超えて汚染されている福島の大地で生産されたものは、すべて危険だと言われると、何か違うんじゃないですか?と思うわけです。
土壌の汚染は、そのまま100%作物の汚染になるわけではありません。
そこは植物たちの偉いところであり、また土というものの偉大さなのです。
実際に栽培して見て分かったこととして、作物への汚染の移行は予想よりもずっと少ないもののようだということが、数多くの検査から判明しつつあります。
やはりものごとは、一つ一つ個別に見て欲しいと思いますし、学者先生にはお分かりにならない、また一般消費者の方々にもご理解いただいていない、農業という仕事特有の事情があり、農業者はそれぞれに現場で出来る限りの努力をしているのです。
元はと言えば、何の策も講じないまま許容限度だけを引き上げるという対応でお茶を濁した、県や国の方針が悪かった!それ以外の何ものでもないはずなのですが、いつの間にか問題がすり替わってしまっています。
「東北の農家」などという恐ろしく広範で曖昧な対象と、消費者というこれまた国民全員とも言える人たち、お互いに顔の見えない集団同士で争いを構えてどうなると言うのでしょう。
これでは、個別に努力している生産者の苦労が水の泡になってしまいますし、賢明な判断をしようと情報収集に努力を傾けておられる消費者の方々も、疑心暗鬼の気持ちになってしまいます。
やはり、武田先生、ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃないでしょうか?