食工房の作業条件は、その日に造るものによって変わります。
パンを焼く日は、作業場の温度は25℃以上を確保します。
今の時期は、問題なくこの温度が確保出来るどころか、30℃から下がらなくなる程ですから、醗酵に時間差をつけたい時は、作業場の外の涼しいところに置くことさえあります。
一方、マフィンやスコーンを焼く時は、全く逆の条件になります。
※何故そうなのかについての関連記事、<4/6> <5/18>
部屋は冷たいほど良い条件なのですが、朝からすでに30℃を超えているのですから、何とも仕方がありません。
部屋が30℃ということは、道具も機械も作業台も、全て30℃ということになります。
前にも言ったかも知れませんが、冷房はありませんので、その日の作業は、先ず冷却作戦から始まります。
材料は、すでに前の日から準備して冷凍庫や冷蔵庫に入っていますから問題なし。
ミキシングボウルは、二まわりくらい大きいボウルに氷水を入れた中に漬けます。
ドゥフックと呼ばれる回転部品は、取り外して冷凍庫の中へ。
大物のモルダーというローラーの機械は、冷凍庫には入りませんから、苦肉の策でローラーに氷を乗せて回転させながら冷やします。
当然氷が解けて水滴が滴りますから、下に受けるものを置きます。
作業台の上にも、氷を山盛りに入れたバットを置いて冷やします。
そうやって全部冷却出来るのはいいのですが、もう一つの問題は結露です。
乾いた布でいくら拭いても、すぐに結露して来ます。
こうなると後は、作業のスピードでカバーするしかありません。
あんまり結露が激しい時は、生地の水分量を調節することもあります。
それでいて、オーブンの中には熱湯を入れたバットを置いて蒸気を立てているのです。
マフィンとスコーンを焼く時は、作業中は全く戦争です。
声をかけられても返事も出来ないくらい、テンションが上がっています。
それでも手慣れるというのは恐ろしいもので、すでにこのテンポが快感になっています。
まあ、それだけ凝ったことをやるおかげで、添加物を使わず、基本素材だけでも良い食感が出せるということですね。
ちなみに真冬の頃は、ずっと気を楽にしてやっています。
よそ者の会津考 vol.2
会津の歴史と言っては、せいぜい観光パンフレットに書かれている程度のことしか知らない私ですが、先日、ある観光パンフレットを見ていたら、蒲生氏郷という人物のことが載っていました。
この人、会津若松の町を拓いた始祖なのですね。
戦国武将織田信長の家臣で、行く行くは信長の後継者と目されていたほどの人物だったそうですが、信長が暗殺されその後豊臣秀吉の時代には、その有能さゆえに妬まれ、あるいは警戒されて、都を遠く離れた東北会津の地に左遷されたというのが、この人が会津の地を踏んだ経緯であったようです。
氏郷は、会津に理想の国づくりをしようと、そこを出身地にちなんで「若松」と名づけ城を築き、創意に満ちた街づくりに着手します。
こういう話を聞くと、私は、何と言うか血が騒ぐんですね。
あるいは、遠い前世の記憶が呼び覚まされるような、まあ、ありもしないバカバカしいと言われればそれまでですが、そんな感覚にはまってしまうのです。
新しい領主がやって来て国を拓くという話しは、そう珍しくはないのですが、会津の地の利というのは、今想っても何とも魅力的です。
笑われるかも知れませんが、私は時々、独立国「会津」を夢想することがあります。
いや、決して悪くないと思いますよ・・・「会津国」。
政治的なことはともかく、資源、エネルギー、気候風土、どれをとっても、十分に独立国としてやって行けるだけの資質に恵まれていると思います。
そんな話を、時々、店の常連さんと交わして盛り上がる私です。
でも、一方でふと思うんですね。
言わばよそ者がやって来て拓いた「会津若松」を、元からこの地にいた人々はどんな風に感じていただろうかと・・・。
今となっては、会津生まれの人だって、そんなことは思いもかけないことでしょう。
そんなことを思うのは、私がよそ者だからかも知れませんね。
通販もやっています。
食工房では、通販もやっています。
ご本人宛、依頼先宛ともに、遠方への発送を承ります。
ただし、今のところホームページ上からは注文出来ません。
カートシステムを導入して便利にしたいところですが、何しろ製造に手間暇のかかる仕事ですので、そちらの方までは手が回りません。
前にも申し上げましたが、スローフーズ・スロービジネスで行きたいと思いますので、どうぞご理解ください。
お問い合わせやご注文はEメールかFAXでお願いいたします。
郵便も、もちろん歓迎です。
どうぞよろしく。
食工房のホームページに、お問合せ先、メニュー一覧表などを掲載してあります。
★ホームページへのリンク
またこのブログ上には、個々の商品に関する記事があちこちにありますので、興味のある方は商品名で検索してください。
本日の食工房
木曜日ということで、娘も自動車教習所は休みにして、食工房の仕事をしてもらいました。
それでも今日は、遅い夕食の後に残業となってしまいました。
このブログも、夕食前の合い間に書いています。
昨日は昨日、今日は今日、とりあえずがんばるしかありません。
まあでも、そんなに嫌な気がしているわけではありません。
今日は、自ビールの二回目も仕込むことが出来ましたし・・・。
大きなしくじりがない限り、結構楽しくやっているのです。
どうぞご安心を。
コーヒータイム
駅カフェにて
コーヒータイムと言うと、くつろぎのひと時を思い浮かべますね。
休息は時に、何かを成し遂げることよりもずっと大切なことがあります。
皆さんは、休息の「質」を考えたことがありますか。
お休みの時、何もせずにボンヤリと過ごすこともあれば、何か好きなことに熱中して、みっちりと充実した時間を過ごすこともあるでしょう。
それぞれ人により、場合により、いろいろだと思います。
それにしても、現代社会の忙しさ、慌しさは、尋常ではありませんね。
私も、最近は何だかとても忙しくて、充実していると言えば聞こえは良いのですが、一日が終わる頃になると、何か悲しい気持ちになって来るのです。
サッと払いのければ、どこかに消えてしまいそうな程度のかすかなその悲しみに、少し浸って見ることがあります。
そうすると、マキとランプで山暮らしをしていた頃の感覚が蘇えって来るのです。
そして昨日の夜、突然、前に読んだことのあるミヒャエル・エンデの「モモ」のお話しを思い出しました。
それで分かりました。
私のその悲しみは、皆が時間銀行の誘惑に乗せられて行くのを悲しく思っているモモの気持ちと、どこか似ているなと・・・。
娘たちも言います。
「不便な時は時間がいっぱいあったのに、便利になったら何だか忙しいねえ。」と。
「人間は欲張り過ぎだ。いろいろやり過ぎだ。」と、今度は息子が言います。
そうすると、私が一番悪い人間だなァ・・・。
何でもかんでも、やりたがり屋で欲しがり屋で・・・。
何でもやり過ぎないことが、エコロジーの極意だったりして・・・。
そして休息とは、本当に何もしないで過ごすことを言うのでしょうね。
でも私は、せめて一杯のコーヒーだけは欲しい・・・。
獏の空の下から・・・
駅カフェ
会津若松市内、JR只見線七日町駅の駅舎の中にあるこのカフェ、観光会津の名所の一つです。
しかもただの喫茶店ではありません。
会津の地場産品のアンテナショップになっているのです。
駅前の通りに広がる七日町商店街の存在も考えると、この駅カフェのアイディアはなかなか卓越していると、私は、初めて前を通りかかった時から思っていました。
よく手入れされたレトロな感じの建物は、外も中も統一感があっていい感じです。
その駅カフェにご縁があって、何と!食工房の焼き菓子がメニューの中に登場しました。
今日は、その駅カフェに出かけて、お客さんになってお茶をご馳走になって来ました。
自分の造った焼き菓子の名前が、こうして他所のお店のメニューに載っているのを目にすると、何だか不思議な感じです。
幸い、お店の方にもお客様にも評判は悪くないようなので、先ずは一安心です。
これからますます、油断をせず、コツコツと良い仕事を続けなくてはと、身が引き締まる思いでした。
ちなみに駅カフェでは、ミニコンサートライブも開かれます。
詳しいことは、駅カフェのホームページ、スタッフのブログなどをご覧ください。
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駅カフェの場所 地図へのリンク
カリーマサラ
今日はベーキングをお休みして、スパイスワークをやりました。
ほぼ1年ぶりに、カリーマサラの調合です。
カリーマサラ(Curry Masala)は、カレー料理用調合スパイスの別名です。
少ないものでも5・6種類、多いものでは30種類ものスパイスをミックスして独特の風味を創り出します。
私は、20代のはじめの頃、いわゆるカレー粉が何種類ものスパイスをミックスしたものであることを初めて知り、強烈に興味をそそられました。
ほとんど情報もないまま、友達から聞きかじった話だけを頼りに、デパートの地下食料品売り場に出かけて、手当たりしだいにこれはと思うスパイスを買い込んで来ました。
そうやって初めてつくったカレーは、何だか苦みばしっていてとても食べられませんでしたが、それでも懲りずに以来15年くらいかかって、やっとこれはと思えるレシピが出来ました。
カレーの本場インドでは、固定したレシピのカリーマサラがあるわけではなくて、各家庭ごとにまたその場その場で、ちがった調合で自在にスパイスを使いこなします。
私たちにはそこまでする機会はありませんから、逆にいろいろに使えるマサラが一つあった方が重宝と考え、現在のレシピが完成しました。
今日は、まずホール(原形)スパイスをオーブンでサウナ(高温浴)することから始めて、レシピどおりにミックスするところまでやりました。
大きなタルに一杯のカリーマサラは、一晩熟成させて、明日小分けして包装します。
今日一日の作業で、食工房の作業場はすっかりスパイスの香りに染まってしまいましたので、明日明後日の間に掃除と換気をしておかなくてはなりません。
そうしないと、木曜日のパンにカレーのにおいがついてしまいます。ちょっと大げさかも・・・。
ちなみに食工房のカリーマサラは、20種類のスパイスを使って造ります。
一袋100gでカリーソース60皿分、800円で販売しています。
食工房は、パン屋でコーヒー屋でそしてカレー屋です。
こうしてブログを書きながら
こうしてブログを書きながら時々思い出すのは、ニ三十年前、小さな通信を発行するために、白い紙に手書きで文字書きをしたり、切抜きした絵を糊付けしてレイアウトをこしらえていたことです。
当時は、タイプライターが写真植字に取って代わられた頃でしたが、その数年後にはワープロの出現でまた新しい時代が始まりました。
昔は、個人が印刷物を出すというのは本当に大変なことで、印刷所では最低でも千部単位の仕事しかしてくれませんでしたから、個人の印刷物はガリ版と呼ばれる謄写印刷に頼るしかありませんでした。
それを思うと、今はほとんど完璧と言えるほど何でも出来るのですね。
画面を見ながら文字を打ち込み、間違えたら何度でもどのようにでも訂正出来るし、フォントも多彩、イラストや写真も白黒どころか、フルカラーの高精度な画像を自在に挿入出来ます。
そして安いコストで、すぐにその場で印刷物を1部でも2部でも、欲しいだけ印刷することまで出来てしまうのです。
さらに、情報は印刷という手法から解き放たれて、インターネット上でも展開し始めています。
こんなことは、ニ三十年前には、頭の中に想い描くことさえ出来ませんでした。
わずかニ三十年の間に、これほど大きく変化したものは他にあまり例がないのではないでしょうか。
そしてこの情報伝達の変転は、人と人のコミュニケーションの在り様を変えようとしています。
話しが少し飛躍しますが、可能性として、世界が一つになれるチャンスに向かい合っている時代かも知れません。
そういう意味で、今私たちは大きく試されている状況だと、私は思っています。
さて、そんなありがたい状況に感謝しながら、私は、昔発行した印刷物を引っ張り出して、スキャナーで取り込み保存する作業を、暇を見つけては少しずつ進めています。
それにどのような意義があるかないか、今はまだ語れませんが、それを出来ることがありがたく幸せに思える私です。
本日の食工房
今日は月一回の「カフェクラブの集い」を開催しました。
7名の方のご参加をいただき、今回はコーヒーのクールメニューを試しました。
アイスコーヒー、コーヒーゼリー、コーヒーアイスクリームを召し上がっていただきましたが、最後はやはりホットコーヒーで締めとなりました。
納得の行く結論、というところでしょうか。
さあ、来月は「真夏のカレーパーティー」です。
自ビール仕込み
昨日の最後に、実はビールを仕込みました。
ちょっと時期的に遅れてしまいましたが、夏の間には仕上がって十分楽しめると思います。
写真は今日、ちょうど24時間経って醗酵が始まったところです。
私のビール仕込みは、市販のビールキットを使っています。
ただし、添付のドライイーストは使用せず、食工房のパン種を使って醗酵させます。
今回のは、エールビールと呼ばれる赤茶色のビールです。
モルト用の麦のローストがやや深い目で、ホップの香りにナッツのような香ばしさが加わります。
私は、少しくらいクセが強くてもモルトの味が濃厚な方が好みなので、規定量から増量することなく、いわゆるオールモルトで仕込みます。
おまけに天然酵母なので、乳酸菌も一緒に醗酵しますから、出来上がったビールは微妙に酸味を帯びます。
ドイツやベルギーなどでは、こんな酸味のあるビールも珍しくないそうですが、日本では今一受けが良くないみたいです。
仕込み時期や熟成期間の取り方によって、変幻自在に味を変える天然酵母仕込みの自ビールは、付き合っていて本当に面白いです。
そしてこの楽しみは、自ビール仲間同士にしか分からないものかも知れません。
私は、パン屋でコーヒー焙煎にも手を出している浮気者ですが、もし、この国に酒税法などというものがなかったら、ビールかワインか知りませんが、酒造りを仕事にするのも悪くないと思っています。
ただし飲む方は、ほとんどダメです。
酒の味はよく分かりますが、アルコール耐性がないのですぐに気分が悪くなって、それ以上飲めなくなるのです。
さて、今日から一週間か十日経つ頃には、タンクの中のモルトはすっかりビールになっているはずです。
でも飲むのはまだまだお預け。
ボトリングして熟成を待ちます。
本当なら2・3ヶ月から半年くらいかけると、酸味が少し取れてスッキリした味になります。
でも今は夏場ですから、そんなに待っているわけには行きませんね。
8月に入る頃には、飲めると思っています。
さあさあ、ビールを飲みたい方は、食工房にパンを買いに来てくださいね。
さあ、がんばらなくちゃ!
つい先日から、長女が自動車教習所に通い始めました。
いつも食工房の№1スタッフとして、仕事をサポートしてくれている彼女が、これからしばらくの間はいないことになります。
なるべく短期間で終われるよう、短期集中スケジュールを組んでもらいましたので、だいたい毎日、朝から夕方まで家にはいないのです。
でも、一番忙しい木曜日だけは外してもらいました。
あとは、二番目の娘にフルタイムで手伝ってもらって、何とかがんばらなくてはと思っているところです。
こんな時、都合良く手伝ってくれる方がいればいいなと思いますが、手が足りない時だけ、しかもすぐに仕事の役に立つ人材を、というのは虫の良すぎる話しですね。
それに私は、人を雇う力量もセンスも無いことを自覚していますので、ここは無理をしないで減速してやれるだけの仕事量で行こうと思っています。
本日の食工房
そういうわけで、下の娘に手ほどきしながらマフィンとスコーンを焼いて、それから酵母のメンテナンスをして、あとは時間が残りましたのでコーヒーアイスクリームの試作をしました。
おいしく出来たのですが、残念ながらこれは販売用ではありません。
イベントでお振る舞いするのです。
自分でつくって見たい方のために、レシピを載せて置きますのでご参考にしてください。
市販の家庭用アイスクリーマーなどで、簡単につくれます。
材料
牛乳100cc・生クリーム150cc・白砂糖120g
濃く抽出したコーヒー(フルシティーロースト)150㏄
※抽出したあと急冷しておくこと。
卵黄4個分・ウイスキー微量(香りつけに)
つくり方
ボウルに全ての材料を入れ、よく混ぜたら冷凍庫に入れる。
20分くらい毎に取り出してかき混ぜ、3・4時間経つと固まってアイスクリームになる。
アイスクリーマーを使う時は、その器具の説明書に従ってください。
★美味しくつくるための一番のポイントは、入れたてのコーヒーを急冷することです。
続・画面と紙面
先日、「やっぱり手書きの力はすごいな!」と思わせてくれる、1枚の通信が届きました。
B4版片面のみのその通信は、端から端まで完全に手書きそして手描きの、文字と絵で埋められていました。
いかに手書き風フォントが沢山あると言っても、本当の手書きは決定的に違います。
それを紙に印刷(コピー)して見せられた時はっきり分かったのです。
そこからは、それを書いた時の状況やその人の気分までもが伝わって来るのです。
ちょっとした文字の乱れや線のかすれ具合などは、その文字の意味以上の情報を伝えることもあるのですね。
一方ブログの画面で、私はレイアウトをあれこれ考えて作成していましたが、見る方のブラウザの設定によって、全然意図したものとは違って見えることが分かり、ちょっとショックを受けました。
フォントも変えられないし、結局、文字は文字以上の役割を果すことはあり得ないということなのですね。
だとしたら、ブログの魅力って何なのでしょうか。
やっぱり速さでしょうか。
情報が伝わる範囲の広さでしょうか。
あるいはまだ他にもあるでしょうか。
私にとっては、印刷物を発行すること、手紙を書くこと、電話をかけること、ファックスを送ること、それぞれの役割の一部分を兼ね備えている、というのがブログの魅力です。
さてまたその印刷物の話しに戻りますが、私は、何とかしてそれをこのブログ上かホームページ上に載せて、皆さんに見てもらえないものかと考えたのです。
方法はないことはないのですが、スキャナのサイズが足りなくて取り込めないことが一つの理由、あとは、それを封筒から取り出した時の感激までは再現出来ないということもあると思い、止めることにしました。
ブログにはブログにしか出来ないことがあるはずですから、それを活かし切るようなブログを発信出来るようになれればいいのですね。
ところで「高野通信」は、2月に10号を出して以来すっかり間が空いてしまっています。
ブログやホームページにエネルギーを取られているからということはもちろんありますが、ブログを発信するようになったおかげで、私にとって印刷物の持つ意味が整理されてより明確になり、軽々しく出せなくなってしまったことが一番大きな理由です。
楽しみにしていると言ってくださる方もいらっしゃるのですが、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。