今日は、20枚の天板を洗いました。
この商売を始めて、もうすぐ丸4年になりますが、当初から気がついていることがあります。
それは、製品をつくっている時間よりも、道具や機械のあとかたづけやメンテナンスをしている時間の方が多いということです。
仕事というのは、本来そういうものだと納得してはいますが、世の中のペースはそういう時間の使い方でついて行けない速さになって来ていると感じますね。
天板を洗ったり掃除したりしなくて良いための使い捨てのオーブンシート、型に入れたごと販売する紙製のマフィンやケーキの型などを使えば、製品づくりのための時間は大巾に増えることになります。
もちろん多少のコストはかかりますが、もしこうしたあとかたづけのために人員を一人増やすのだったら、人件費の方がはるかに高いですから、こういう資材がどんどん使われているのも当然と言えます。
うちでは、天板は熱いうちに使い古しの布巾で油汚れを拭き取り、その後お湯で洗って乾かしてからしまっています。
マフィンの型は、木のヘラでこびりついたものを掻き落としてから、ぬれ布巾でていねいに拭きます。
ケーキの型は、型離れのためにケーキシートを敷いていますが、やはり使い終わった後はお湯で洗います。
材料を計量したり、仮置きしたり、生地を寝かせたりするための容器も、当然一回一回洗います。
一日の大方半分は、洗い物をしているということが、改めて分かりました。
パン屋だからパンを焼くのが仕事のはずですが、実際には流しに立って洗い物をしていることが多いという感じがしています。
娘たちもよく「私たちはアライグマだよ。」と冗談を言います。
そしてまた、機械の手入れも大切な仕事です。
何しろ壊れたらそれきり、新しいのを買うなどとんでもないことですから、真剣にならざるを得ません。
こういう時私は、自分が工科系の人間であることが嬉しく思えます。
うちでは、道具も機械も、そう簡単にお払い箱にはなりません。
寿命を延ばしに延ばして使い切った後でも、目的外に役に立つこともありますから、捨ててしまうということも滅多にありません。
それから、包丁研ぎもよくやります。
お菓子づくりでも、包丁で材料を刻むことはよくあるのです。
こういう時、刻んだり砕いたりしてある材料を使うという手もあるわけですが、やはりそれをしないのが食工房のこだわりです。
良く切れる包丁は、本当にいい仕事をします。
刻んだばかりの材料は香りが立ちますし、切り口のきれいな生地は、焼き上がった後の食感がちがいます。
というより私は、単純に包丁を研ぐのが好きです。
話がそれてしまいますが、良く研いだ包丁で、空中で薄紙がスーッと切れるのは、私には快感です。
ああ、こんなこだわりばかりでは、やって行けなくなるでしょうか・・・。
でもこの性分は死ぬまで変わりそうにありません。