滅多にないことですが、それでもたまに、他所のそれも大手パンメーカーのパンを口にすることがあります。
その度にがっかりするのは、小麦の味がしないことです。
パンは加工品なので、ストレートに穀物としての小麦の味が出ないのは分かるのですが、小麦以外の原材料、それもたいていの場合油脂分と香料の味を強く感じてしまいます。
そしてその油脂分が、お世辞にも上等とは言えない代物であることは、いつもバターと一番絞り菜種サラダ油しか使わない私にはすぐに分かります。
米飯なら、コシヒカリだのひとめぼれだのあきたこまちだのと、多くの方が、銘柄による味や食感の違いをうるさく言いますが、パンに関して小麦の品種のことをどうこう言うのは、聞いたことがありません。
パンは、まだその程度にしか認識されていない証拠だと、私は思っています。
本来主食であるパンも、この日本では、もうずっと長い間、菓子としての方向に迎合し続けて来ました。
そのおかげで、食パンでさえ小麦の味がしないようなものが出来上がって来たわけです。
菓子パンは菓子パンとして一つの方向であり、いいものも沢山あります。
一方、主食としてのパンは、穀物の美味しさが先に立つべきです。
そのためには、国産小麦を使いそして、あおばだのゆきちからだの南部だのと、それぞれの小麦の持つ美味しさを、最大限引き出す努力をパン屋はしなくてはならないのだと思います。
それを怠っていたから、主食としてのパンの地位は、ちっとも向上しなかったのだと、私は思っています。
確かに米飯は美味しいですが、パンにもまた小麦の美味しさがあって、両方楽しめるのです。
昔、日本にも確実に存在していた麦食文化を、本当に美味しいパンによって再興したいと、食工房は夢を大きく持ってパンを焼いています。
ちなみに現在食工房では、岩手県産「南部地粉」と同県産「ゆきちから」を50%ずつミックスして使っています。
また一部、地元山都町産「あおば小麦」の全粒粉を使っています。