日別アーカイブ: 2008年1月7日

昔語り

昨日の夜から、本を一冊読み始めました。
長いものは読みきれそうにないので、イギリスの作家アリソン・アトリーの「氷の花たば」という短編集を選びました。
末娘が前から欲しかったのを知っていた連れ合いが、この間のクリスマスプレゼントに手渡したものです。
一日に一編か二編ずつ、ゆっくり味わいながら読んでいます。

それで第一話の「メリーゴーラウンド」を読んでいたら、突然、私がまだ小さい子どもの頃、今は亡き父に連れられて、珍しく田舎にやって来た移動動物園に行った時のことを思い出しました。
正確にいつのことだったかは覚えていませんが、父の自転車の荷台につけた箱の中に乗せられて行ったのですから、まだ小学校前だったと思います。
私の村は、遠く徳島へと流れて行く「吉野川」のずっと上流にあって、動物園がやって来たのは少し下流の町でした。
川沿いのでこぼこ道を、ガタガタ揺られながら辿り着いて、さてどんな動物がいたのか、それをあまり覚えていないのですね。
ライオンもいたような気がしますが、定かではありません。
私が覚えているのは、売店で20円のキャラメルを一箱買ってもらったこと・・・。

そして帰り道、父は往きとは反対側の、少しでも自動車の通らない川の北岸の道を通って帰り始めました。
往きよりさらに路面が悪く、じきに尻が痛くて我慢ができなくなり、ずっと先まで橋がないことは分かっていましたが、私が文句を言うと、「よし、そんなら船に乗って向うへ戻ろう。」と言って私を自転車から降ろしました。
父は、道路から外れて川に下りる道を、自転車を押して歩いて行きました。
私も後について川に下りると、そこは渡し場で一そうの小舟が客待ちをしていました。
私たちの他にも何人か客が集まり、舟が出ることになると、父は自転車を担ぎ上げて舟の真ん中に置き、私も乗り込みました。
こんなちっぽけな木の舟に、重たい鉄の自転車を乗せて、沈んでしまわないかと不安でしたが、誰もそんなことを気にかける様子がないので、私も気にしないことにしました。
舟は、両岸の間に張り渡してあるロープに繋がれていて、船頭が両手でそのロープをたぐると、軽々と滑るように川面を渡って行きます。
私は、青々としてよどんだ淵の深さはどれほどだろうかと、恐々船べりからのぞき込んでいました。

不思議なことに、動物園の中のことは一つも覚えていないのに、帰り道のこの光景だけはとても鮮明に覚えています。
そこは、寺家(じけ)の渡し場と言って、今は立派なコンクリートの橋がかかっています。

そしてそこは、奇しくも昨年訪ねた、Mojo Fujiミシシッピーカフェがあるところなのです。
彼に、「昔、ここに渡し場があったろう?」と訪ねたら、知っていると言われて妙に嬉しい私でした。
そして今日は、会津若松へ配達の帰り道に立ち寄った「BOOK OFF」で、大好きなアイリッシュトラッドバンド「アルタン」のCDアルバムを一枚見つけました。
今、それを聴きながら、こうして何もかもがピッタリ来る心地良さを味わっています。
今夜も続きを読みます。