日別アーカイブ: 2008年4月23日

コーヒーの香りは、芸術・文化の香り

これは、私の個人的な感覚に過ぎないのかも知れませんが、私の中では、コーヒーの香りはいつも芸術や文化と結びついています。
音楽や美術そして文芸など、いずれもコーヒーの香りが似合っているような気がします。

若い頃、郷里の高知で、私が通った「木馬」というジャズ喫茶には、一目見て分かるそういうにおいを漂わせた人たちが、よく出入りしていましたし、マイナーでマニアックなイベントのポスターが貼られていたり、チラシを置いてあったりしたものです。
私も当時、関わっていたいた演劇集団のイベントのポスターを貼らせてもらった覚えがあります。

また、同じ街に「笛画廊」というスペースがあって、そこは以前はコーヒーも飲める画廊喫茶でしたが、その頃はもうコーヒーを出すのは止めていて、ガランとしたスペースで年中小さな個展が開かれていました。
中でも面白かったのは、毎月一回、そこを一週間くらい借り切って、前衛アートのイベントをやっている人がいたことです。
そこではコーヒーは飲めませんでしたが、逆に私は、アートからコーヒーの香りを連想していましたね。

そして郷里を離れて東京へ出て来た時、まっ先に探し回ったのは、自分の居場所になりそうな「店」でした。
ずい分あちこちに出没していましたが、間もなく見つけてお気に入りだったのが、代々木にあった「いちごの目覚まし時計」という店でした。
週末には、アメリカのヒッピーなにおいがプンプン漂って来る、ブルースやロックのライヴがあり、しょっちゅう聴きに行きました。
また、いろいろなイベントのポスターやチラシ、ミニコミなども沢山置かれていて、私にとっては、自分の欲しい情報を得られる貴重なチャネルでもありました。

中でも特別刺激的で面白く、楽しみにしていたのが「なまえのない新聞」というミニコミで、日本のヒッピームーヴメントに関する情報はすべて網羅していただけでなく、世界中のあちこちのネイティブピープルの状況やエコロジー運動のことなども伝えていました。

ちなみに「名前のない新聞」は、1972年から数年間刊行され、休刊の後1988年に復刊し現在も発刊されています。

そしてその後、私はフォークロアセンター<参照>と関わることになったわけですが、そこでも出入りしていたのは、やはり美大や音大や文学部の学生など、芸術・文化のにおいのする人たちでした。
工科系出身の私にとって、彼(彼女)らは、いつも新鮮な刺激をくれる人たちでした。
そんな中に、有名なクリエーターを次々と輩出したことで知られる「セツ・モードセミナー」に通ったり、卒業した人たちが何人かいて、よく顔を見せてくれました。
その中の一人は一時期、私と一緒にフォークロアセンターのスタッフをやりましたし、別な一人とは、今でもおつきあいがあります。

私にとって、何かと記憶に残っているその「セツ・モードセミナー」の創設者長沢節は、会津若松の出身だっということを後年知り、奇しくも私がその会津の一角に移り住んで暮すようになるとは、当時は想像も及びませんでした。

そんな風に、思い返せば私の人生のそこかしこに、芸術・文化に関わる人たちとの出会いや楽しい語らいがあり、側にはいつもコーヒーの香りが漂っていたような気がします。
ひょっとすると、コーヒーの香りには、クリエイティブな感性を触発する何かがあるのじゃないかと、今、そんなことを思っている私です。

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