コーヒー豆は、寝かせて古くなったものの方が美味しいんだよと、何人かの人に言われたことがあります。
2年、3年はおろか、10年あるいは15年ものを売りにしているコーヒー屋さんもあります。
そんな曰く付のコーヒーを、私は、残念ながらまだ口にしたことはありません。
でも自分の経験から、最近、このオールドビーンズを少しばかり疑っています。
先ず、コーヒー豆は農産物です。
それも植物の種子です。
しかも、殻を取り去って中身がむき出し、種子としての生命はすでに死んでいます。
お米で言えば白米と同じです。
これを長期保存するとなれば、先ずどのような環境で保管するのか、そこが大問題です。
冷蔵庫でしょうか?定温倉庫でしょうか?あるいはもっと凝った仕掛けの保管庫でしょうか。
ちなみに私の保管場所は、土蔵造りの蔵の二階です。
プラスチック製のタルに入れ、蓋をして保存していますがそれでも、一年くらいの間にずい分劣化してしまいます。
正直な私の実感では、その間に少しでも風味のバランスが良くなったとか、味わいが増したとか、プラスの要素は感じられません。
言われているように、熟成して味が良くなるためには、厳密な保存のノウハウがありそうです。
それでも私は思うわけです。
そこまでして、オールドにこだわるほどの価値が、本当にあるのだろうかと。
コーヒー豆の風味を決定づけるのは、あくまでも農産物としての素性だと思います。
即ち品種であり栽培法であり、そして土壌環境気候風土です。
その次に脱果精製法が来ます。
焙煎技術はとてもウェイトの大きい要素ではありますが、生豆の素性を超すものを作り出すことは出来ません。
そして保存による熟成・・・、このあたりはもう私の理解の及ぶところではありません。
今もし私が、生豆の長期保存を考えるとしたら、雪室でチルド(氷温)保存して、使う前に温かく乾燥した部屋に4~5日置いて、それから焙煎でしょうね。
それでも2、3年でしょうか。
いずれにしても嗜好品の世界には、真偽の程を確かめることも判定を下すことも出来ないような不思議な価値が、沢山沢山あるのです。
改めて、食工房テイストを再確認している私です。