銘柄を選ぶ楽しみ。
昔はコーヒーの銘柄と言えば、国別に一つか二つずつくらいで、たいていそれで通用していたわけです。
でも考えてみたらわかることですが、コーヒー豆は農産物ですから、同じ国の中でも地域によって品種によって、ずい分品質が違って来ます。
その年の気候にも左右されますし、脱果精製法の違い、農薬の使用状況、肥料の質(有機か、化成か)の違いなどにより、農園ごとに、またその年ごとに、品質は異なるわけです。
例えば日本で、お米だったらコシヒカリが、それも新潟県魚沼郡産のものにプレミアムが付いたりするわけですが、今コーヒー業界でも、銘柄別に差別化して取り引きするようになって来ていて、特定の銘柄に人気が集まったりする現象が起こり始めています。
確かに良いものは良いで歴然とした差があり、良いものを探し当てるセンスが、なお一層求められる時代になりました。
消費者の方々も、いろいろ選ぶ楽しみが増え、自分のこだわりを持つことが出来ますから、これはこれで嬉しい状況であると言えます。
今はまだ過渡期のようで、銘柄間の価格差は、一部のものを除いてさほどではありませんが、そのうちに人気が集中する銘柄の価格が高騰したりするかも知れません。
一方、コーヒーは嗜好品であるが故、最終的には人それぞれの好みに左右され、客観的評価は付け難いと言えます。
業界にはプロの鑑定士もいますし、評価基準もありますが、専門的で一般の方には分かり難いし、第一それでその銘柄の個性を全て言い当てることは、元々不可能です。
そこでどうしても、「軽やかな」とか「深みのある」とか「キレの良い」とか「厚みがある」とか、皆さんが何か共通のイメージを連想してくれそうな言葉を使って伝えようとするしかないわけです。
こうなると、詩や俳句ほどではないにしても、表現力を試される世界ですね。
果たしてそれでどのくらい伝わるのか、微妙と言えば微妙です。
面白かったのは、仕入先の一つ<アタカ通商>のホームページ上でユーザーレビューが紹介されているのですが、そこに私の評価レポートが掲載されたことがあり、偶然かどうか分かりませんが、その中で秀逸と評価した3つの銘柄が、その後間もなく全て売り切れとなっていたことです。
こちらは驚くと同時に、後の仕入れが出来なくなって参りました。
今、コーヒー業界はちょっと面白い状況なんじゃないか・・・、そんなことを思うこの頃です。