日別アーカイブ: 2007年10月17日

紅茶の話

コーヒーと並んで嗜好品として愛されているのが紅茶です。
コーヒーを嗜好品の王と例えるなら、紅茶は女王といったところでしょうか。
コーヒーを商売にしていると、多少なりとも紅茶に関心を払わないわけには行きません。
しかしながら私は、紅茶に関してはほとんど素人なので、薀蓄を語ることは出来ません。
そこでちょっと別な方面のお話をしてみたいと思います。
紅茶の産地で有名な所と言えば、インド、スリランカ、ネパールということになると思いますが、この日本も戦前は紅茶の輸出国だったことは、案外知られていないのではないでしょうか。
すでにご存知の方もいると思いますが、私たちが日頃飲んでいる日本茶と、専ら輸入品だと思っている紅茶は、実は同じお茶の葉を原料に造られます。
緑茶と紅茶の違いは、つまり製法の違いなんですね。
ですから、日本で紅茶が造られていたとしても、何の不思議もないわけです。
緑茶は、新鮮な茶葉を先に蒸して熱を加え、葉緑素を分解する酵素の働きを止めてしまいますので、きれいな緑色に仕上がります。
一方紅茶は、生葉を熱を加えずに醗酵工程にかけますので、葉は黒っぽい色に変色し、紅茶の風味と色が醸し出されるわけです。
ところで日本では、お茶の栽培は関東あたりが北限で、ここ東北では残念ながらお茶の栽培は出来ません。
一方私の郷里の高知では、私が子どもの頃、周りのあちこちにお茶の木が植わっていました。
畑と畑の、畑と道路の境に、一列にお茶の木が植えられている風景を、よく見かけたものです。
農家はどこでも、出荷用と限らず自家用としても、毎年初夏の頃になるとお茶の葉を摘んでいました。
自分でお茶に加工する人もいましたし、加工してくれる業者もありました。
しかし、紅茶を造っているのだけは見たこともなければ、昔造っていたという話も聞いたことがありませんでした。
ところが後年、それもわりあい最近になって、私の生まれ故郷の村の二つ隣の村、現在の大豊町というところで、醗酵製法のお茶を今でも造っていることを知って驚きました。
「碁石茶」と呼ばれるそのお茶は、醗酵させた黒っぽい茶葉を、碁石くらいの大きさのペレット(錠剤)状に固めてあります。
醗酵の工程も風味も紅茶と違うとは言え、醗酵製法のお茶が自分の郷里に残っていたことに興味を覚え、また誇りを感じる出来事でした。
お茶は元々日本で栽培出来る作物ですし、しかも紅茶製造の歴史もあったわけですから、ここらで研究熱心な人が現れて、インドやスリランカの名品に勝る銘柄をつくり上げてくれないものかと期待が膨らみますね。
ちなみに現在、あちこちのお茶の産地で紅茶を造るようになったようですが、まだまだ知られていないし、定評も得らていないようです。
国産紅茶の地位向上を願っています。