日別アーカイブ: 2008年3月29日

ネコヤナギ

ネコヤナギと言えば、いち早く春の訪れを告げる植物として、誰でも良くご存知のことと思います。
柳は水と親しい植物で、柳のあるところには必ず水脈があると言われています。
井戸を掘る時は、その前に柳の枝を使って水脈を探す方法があると、何かの本に書いてあるのを読んだ覚えがあります。
ネコヤナギは、中でも特別水と親しいと見えます。
たいてい、川岸の根元が水に浸るようなところに生えています。
時には、流れの只中の中島のような岩の上に生えているものもあります。
洪水の時、すっかり水の底に沈んでしまうほどでも、たくましく根を張って生きている姿は、驚嘆に値します。




2003年3月 獏の空の下にて


 春一番に、綿毛に包まれて芽吹いて来るのは、あれは花です。
ネコヤナギは雌雄別株で、それぞれに雌花と雄花が咲きます。
写真は、雄花が開花しつつあるところ。
最初、白い綿毛のまん中あたりから赤みをおび、やがて黄色い花粉が詰まったヤクが開きます。
この黄色い花粉が、川風に乗って飛び出す瞬間を撮りたいと、何度か挑戦しましたが未だ果せません。
おまけに会津に来てからは忙しくて、ネコヤナギの写真を撮りに行くことも出来ないでいます。
以前、山暮らしをしていた頃は、毎日、すぐ下の川に様子を見に行って、チャンスを窺ったものでした。
流れの中の岩の上に生えている株を写真に撮りたくて、薮を漕いで川岸を這いずり、飛び石伝いにその場所まで辿り着くのは容易ではありませんでしたが、流れの中で一時間もそれ以上も、ネコヤナギと対話しているのは、なかなかいい時間でありました。




2003年 獏の空の下にて 
この写真は、元画像が見当たらないため、
カラーコピーしたものから編集しています。



  柳の笛
北欧には、柳の笛という楽器があります。
スウェーデン語で、Salg(セリ・ネコヤナギ) Flojt(フレイト・笛)と呼ばれるその笛は、春を迎えたばかりのネコヤナギのやわらかい樹皮を剥ぎ取り、乾燥させて丸く細長い筒をつくり、それに細工をして音が出るようにしたものです。
何の変哲もない、指穴もないその笛は、管の長さからは予想外の甲高い音色で、不思議な音階を奏でます。<参照記事>
倍音だけで旋律を奏でる音楽は、何か私たちの精神状態を特別なものにする力があるように感じます。
柳は洋の東西を問わず、霊力、時に魔力を宿す不思議な木と目されていますが、楽器になって尚その力を発揮する柳と、それを愛でる人の心とのかかわりの不思議さを思わずにはいられない私です。