食工房で使用している酵母は、完全自家培養天然酵母です。
「阿武隈・飯豊酵母」の名の由来は、今から17年前に阿武隈山中の沢水から酵母種を起こしたことに始まります。
それから14年間毎週一回、たまに休んだ時を考慮しても700回余り継ぎ種培養して来ました。
「継ぎ種」というのは、「かけ継ぎ」とも「老麺法」とも言いますが、元の種を全部使い切らずに残し、新たに材料を加えて再び増殖活性化しながら、繰り返し使い続けて行く方法です。
西洋でも「サワードゥー」の名でよく知られた方法です。
阿武隈山中では、ずっと同じ沢の水を直接使い続けましたので、季節季節に様々な状態の酵母菌や乳酸菌が混ざり合って、複雑な風味を生み出していました。
雑菌の混入も免れなかったと思いますが、培養の段階で乳酸菌が生成する酸と酵母菌が生成するアルコールによってほぼ完璧に死滅させられるので、まずそんな心配をしたことはありません。
会津で正式にパン屋を始めてからは、水道水を使うようになりましたが、年に1回は飯豊の麓まで出かけて山の水を汲んで来て入れます。
こちらでも3年間に毎週2回ずつ、すでに150回以上継ぎ種しています。
これが「阿武隈・飯豊酵母」の由来です。
ところで、酵母は大変デリケートな生物で、別な強い種が入ると今までの種が淘汰されてしまうこともあり得ますので、イーストも含め他の酵母は一切使わないよう、作業場に持ち込まないよう気をつけています。
これまでの17年間に、2回ほど危うく絶えさせる寸前の危機に遭遇しましたが、奇跡的に回復し現在に至っています。
また、別に半年間冷凍した種を再培養して耐冷テストもやりましたが、問題なく再生するタフさを見せてくれました。
おかげさまでもうずっと以前から、自分のパンの風味は変わることなく、いつ食べてもすぐにそれと分かる個性を保ち続けています。
飯豊山食パン 1斤
本日の食工房
今日は連休後半初日、この時期毎年、千葉県から訪ねて来てくださるご家族が、やはり今年もいらしてくださいました。
他にも一年ぶりという方が、去年買っておいしかったからと、いらっしゃるなりすぐにお目当ての品を手に取られ、これは本当にうれしかったですね。
皆様のこうした情熱に支えられて元気を出しています。
来年またご来店いただいた時も、変わらず店を開けていられるようがんばります。