人気のない朝のコーヒー屋で・・・
人気のない朝のコーヒー屋で
ひまをつぶしてたら ひびわれた
ガラス越しに 摩天楼の衣ずれが
歩道をひたすのを見たんです
それでボクも 風をあつめて 風をあつめて
青空を駆けたいんです 青空を
1970年代前半に青春時代を過ごした方なら、ひょっとしてご存知でしょうか・・・この歌。
いわゆるアイドルではありませんでしたが、日本では不出のロックバンドだったと、私は今でもそう思っている「はっぴいえんど」・・・。
「風・街・ろまん」というアルバムのA面3曲目に入っていた「風をあつめて」という曲は、当時20代前半を過ごしていたボクの感性にあまりにもピッタリとはまってしまったのでした。
人気のない朝のコーヒー屋で・・・は、その3番目のフレーズ。
貧乏、各駅停車、風来坊、友達のアパート、飲み慣れないバーボンウィスキー、夜明けまで語り明かした朝の眠気覚ましのコーヒーの味、そしてバックに流れていた「はっぴいえんど」・・・。
やっぱりここでも、コーヒーは役者でしたね。
嗅覚はタイムマシン
嗅覚は、五感の中でも一番原始的というか、動物的な感覚だそうです。
だから、匂いは時として、突然とんでもない古い記憶を呼び起こすことがあるのです。
コーヒーを入れている時、フワッと上がってくる香りが鼻に入った瞬間、日頃絶対に思い出すこともないような記憶が、鮮やかに蘇ることがあります。
たとえばそれは、20代の初め一人で東京に住み始めた頃、下宿の狭い部屋で朝コーヒーを入れている、まさにその瞬間の記憶だったり、また別な時、コーヒーを入れてくれる彼女の手元を覗き込んだ瞬間の記憶だったり、そして友達のアパートでレコードに合わせて口ずさんだ「風をあつめて」のフレーズ、それは他のどんなきっかけで思い出す時よりも、ずっと鮮烈な臨場感を伴っています。
その瞬間、どこに連れて行かれるかは分からないけれど、まさに嗅覚はタイムマシン!
あなたは、コーヒーの香りで何を思い出しますか?