日別アーカイブ: 2009年1月20日

もう一つの栄養


 


今日は、連れ合いの所望に応えて「茂田井武展」を見に、喜多方市立美術館へ出かけました。
私の世代の者なら、子供の頃に読んだ絵本や物語本の中のそこここに、彼の絵があったのを思い出すことでしょう。

私の場合正直に言えば、それらの絵は子どもの頃に確かに目にしていたはずなのですが、絵の印象も茂田井武の名も、さほど記憶に残っていたわけではありません。
しかし会場に入って見始めると、現在の自分の目で見ている新しい印象と、古い記憶の底から滲み出してくる郷愁のようなものが入り混じった不思議な感覚に、しばし時を忘れました。

その一つ一つをはっきり覚えていなくても、そうやって古い記憶のどこかが震えるのは、それらの絵が私の脳内のどこかに何ページかの場所を占めていて、私のものの見方に影響を与えているということなんですね。
ちょっと小難しい言い方をしてしまいましたが、要するに遠い昔にそれらは心の栄養として、私を豊かにしてくれたものであったということですね。
そして今日は、改めてそれらの絵を眺めて、もう一度栄養を受け取ったような豊かな気持ちになりました。


ところでこの間の風邪の最中、食工房の仕事をするエネルギーは、どこから供給されるのだろうかと考えていました。

それは先ず一つは、皆さまからのご愛顧でしょう。
それに元気づけられ、励まされていることは間違いありません。

もう一つは、自分自身の内側から出て来る意欲でしょう。
しかし、技術能力の向上や皆さんの期待に応えようという気持ちは、ただ生活のために売り上げが必要だからという理由だけでは、とても説明出来るものではありません。

また皆さんに喜んでもらえる、製品やサービスに現れる沢山のアイディアなどは、そういう現実的な事柄とはむしろ関係のない、自分の心の中の畑にどのように肥料を撒いて来たかということにかかっていると思います。
例えば、どんな音楽を聴いたか、どんな絵を見たか、どんなお話を聴いたか、どんなことをして遊んだか、それらが幾重にも積み重なってどれ程の厚みを持っているか、そこが自分の仕事を喜びに出来るかどうかの決め手になると思うのです。


今日の美術館は、とても良かったです。
こういう時間が時々なければ、はっきり言って私は仕事を続けて行くことが出来ません。
今日は、それが以前にも増してはっきりと分かりました。


展示の中に、山型食パンに穴が開いていて、中に向かって階段のようなものが見えており、上の方の別な穴につながっているという、不思議な愉快なイラストがありました。
ちょっと借用して皆さんにも、お見せしたかったのですが、買った画集の中にもネット上にも出ていませんでした。
お近くの方は、ぜひ会場へ。