月別アーカイブ: 2010年1月

去年の宿題、今年の課題

去年の冬、近所の方に地元で採れたクルミと上手に造られた干し柿をいただき、何か出来ないかと持ちかけられました。
いくつか試作品を造ってみましたが、どれも今一つ納得が行かず、来年までの宿題となりました。
そして年が明けて、また新しいクルミと干し柿をお預かりしています。
今年の課題です。



西洋の菓子クルミのように、形を損なわずに取り出す
ことはとても難しく、かなり細かく割れてしまいます。


ちょっと話が横に行きますが、このあたりでは日本在来の鬼グルミや沢グルミが、自生あるいは植樹されたものもありますが、沢山生えているのです。
秋に落ちて来た実を、リスなどに持って行かれないうちにどんどん拾い集めて来て、土の中に埋めるなどして外皮と果肉を腐らせ、水で洗って乾かしておきます。
それを冬の間の手間仕事に、殻を割って中身を取り出します。
なかなか手間暇のかかる仕事で、とうてい経済的に報われる仕事にはなりませんが、何もしないよりいいからと、コツコツやっているうちに結構な量になるそうです。
輸入物の菓子クルミに比べて油脂分が多く、味も濃厚です。


 



細くすると折れやすいと判断し、太くて短いスタイルにしました。



食感が今一つ・・・、改良の余地あり。
塩味も足りず、次回はもう一工夫です。


今日は、そのクルミを使って、焼き菓子を試作しました。
焼き菓子と言うと、たいていスィーツと呼ばれる甘味品を思い浮かべますが、今回は全く趣向が違って塩味のビスケットです。
わらいごまやバタービスケットですでにおなじみの手法です。

今日のは、粉チーズとガーリックパウダーにブラックペパーも効かせて、スナック菓子のようなものをイメージしました。
ただし、市販品のようなアミノ酸添加物をどっさり入れて濃厚な味付けをした、怪しげなものではありません。

チーズは、純正なハードチーズであるエダムチーズを粉にしたものです。
ガーリックもブラックペパーも、粗挽きのものを使用。
油脂分は、菜種サラダ油。
とりあえず暫定的なレシピを決めて、試作してみました。

で、結果は・・・?
改良の余地はあるものの、何だかイケそうな予感です。
ビールのお供に良さそう・・・。


 



以前使っていたステンレス製の寸胴鍋は、
酵母の培養に使うようになりましたので、
専用の仕込みタンクを新調しました。


それではと、去年の秋に買い込んだまま手が出せなかったビールづくりの材料を出して来て、1タンク(15リットル)仕込みました。
モルトは、エドメ社製「エクストラ・スタウト」。
ギネスと同じ、ガッチリ濃厚な黒ビールです。
酵母は、添付されているイーストは止めて、我がパン種を使います。

私は、元々飲めない口ですが、酵母の取り扱いのトレーニングになりますので、酒造りも時々やるのです。
もし、お味見してみたい方がいらしたら、少しずつ差し上げられると思いますので、ご来店の時にお声をかけてください。
ただし、市販のビールを思い浮かべられると、ちよっと違いますので、そのおつもりで・・・。

開店記念日

今回は、事前に何の告知もしませんでしたが、本日7回目の食工房開店記念日でした。

と言うことは、ここで商売を始めて丸6年が過ぎたことになります。
6年間は、皆さまのご愛顧やご支援のおかげでここで商売を続けて来られたという意味では、感謝に堪えない長い長い6年間でしたが、パン屋の腕を磨いた期間としての6年間は、本当に短いたったの6年という思いです。

まだまだ至りません。
我が年齢を考えると、死ぬまでに自他ともに認める本物のパン職人になれるかどうか、甚だ心もとない私です。
まあしかし、今までいろいろなことを好き放題にやって来ましたので、その中から何か一つか二つでも思いがけぬところで功を奏して、とりえになってくれればいいのですが・・・。

そういうわけで、当面10周年を目指して続けて行きたいと思っております。
これからもお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。



夕方、お祝いのお花を届けてくださった方があり、
いつものように終わろうとしていた一日が、突然
華やかで感慨深いものになりました。
ありがとうございました。

営業再開、今朝も雪


降る度に様子が変わる雪景色に、私は、飽きることはありません。


今日からまた営業を始めております。
今朝は暗いうちから、パン生地をこねていました。
そうしたら店の前の道路を、除雪車が何度も往復していました。
何時になく丁寧というか何度も行ったり来たりするので、これはよほど積もったのかなと、思いましたがそうではなかったようで、道路沿いの家の雪が次々と落ちて道路を塞ぐので(うちもそうなのですが・・・)、それを片づけていたようです。
雪国は、こんなこんなところで大変な負担を強いられているわけです。
でもその恩恵を、商売をしている我が家なんかが真っ先に受けているわけで、こうした交通の確保がなかったら、食工房は冬の間は休業ということになります。
全くありがたいことです。
だからこそ、いい仕事をしなくては罰あたりというものですね。


ここでまた勝手気ままなことを申し上げてひんしゅくを買いそうですが、雪は素敵です。美しいです。
雪が積もった朝は、家の中まで何となく明るくて、なかなかいいものです。
雪明かりと言いますが、本当に明るいのです。


さてお知らせです。


越年長期熟成「飯豊山シュトレン」を販売いたします。
数は、10個くらいしかありませんので、お入用の方は予約してください。
包装は、真っ白な袋に入れたギフトパッケージといつもの簡易包装の二種類の、どちらかを選んでいただきます。



ギフトパッケージ用の包装ラベルデザインです。


内容は、昨年末クリスマス用に製造したものと全く同じものです。
ギフトパッケージ 1本 2900円
簡易包装     1本 2700円
なお、1本売りのみで、1/2カットはありません。


ご注文はお早めに。

今日からエンジン始動



 


まだ店頭には、「年末年始休業中」の張り紙がかかっていますが、中では明日の営業再開に備えて仕込みが始まっています。
エンジン始動です。
とは言え、しばらく止まって冷え切ったしまったエンジンは、少々ギシギシと異音を立てながら回り始めました。
やっぱり年だな・・・、先日の屋根の雪下ろしが効いたかな・・・などと、これは言い訳です。
少しずつペースを上げて行くことにしましょう。
今年は、忙しい中にも余裕を持ちたいと、切なる願いです。


さてさて、年末にきれいに在庫が片付いてしまったおかげさまで、先ずは明日パンを焼かないことには、売るものがありません。
午後には、焼き揃っていることと思います。

ご来店をお待ち申し上げております。

多分、雪になることでしょう。
ポイント2倍、まちがいありません。

希望はその先に・・・


2010年1月5日 降雪の朝


新しい年が始まって、それも21世紀が始まって10年目の今年。
素直に未来への希望を語りたいと思いますが、一方でそうは行かない何かが私の中に引っかかっています。


今の私たちの社会そして世界も、このままでは行き詰ってしまうと誰もが薄々感じながら、その流れを止めることも変えることも出来ず突き進んで行くばかりの状況。


ますます高性能になって行くコンピューター。
ますます高速大量に伝搬される情報、広範囲に流通する物資。
便利になって行く生活の中で、私たちは手も足も体も動かさずに済むようになり、頭さえ使わなくて良くなってしまいそうです。


気がつけばいつの間にか、身の回りは道具と機械に囲まれ、一方でゴミの山・・・。


そんなことを思っていた時、会津学を主宰している菅家博昭さんのブログ「記憶の森を歩く」2009年12月30日の記事「事実を正視する必要性」が、目に留まりました。<参照>


私たちの祖父母、親たちから私たちそして子どもたちへ、この3~4世代の間に確実に失われてしまったか、あるいは今や失われようとしている沢山のものごと。
そして何より、この大自然の中で生かされているという感じ方と身のおき方、つまり感性・・・。


暮らしの中に、この社会の中に、また人々の心の中にあったもろもろの生活の術、習慣、仕組み、そして感性、そうしたものは必要が無くなった途端、いかにもあっけなくこの世から消えて行ってしまうもののようです。


技術と技能・・・。

まだしも技術は、情報化して後世に残すことが可能ですが、技能は、人の手や足や体にそして頭の中に獲得されるものであって、それは人から人へ直接でなくては伝えることは出来ません。
使い続けること、それを必要とする生活や社会の仕組みが息づいていなければ、やがて廃れてしまうことは避け難いのです。


そして私たちの祖父母や親の世代にはあったと思われる、ある種の感性。
私たちの子どもの世代には、もはやそのかけらもなくなってしまったかも知れません。
そして私たちは、その途上にあって傍で見ていた者として、その気があれば立ち戻ることも可能な、あるいは語り伝えることの出来る、大変微妙な立場だと思っています。


どの道私たちの社会は、否世界は、この先一山越さないことには先には行けないように見えます。
なかなか厳しい、高い山を越えなくてはならないのだと思います。
その時に頼りになるのは、先人達が持っていた感性だけだと、私はそう思います。


厳しい現実から目を逸らして、見せかけの希望を語ってみたところで何の足しにもなりはしません。
本当の希望があるとしたら、厳しい現実のその先です。


自分たちが何を見ているか、どこを見ているか、やがてそれが問われる時が来るに違いありません。



さてここまで、この先にどのような希望が持てるという話は、出て来ませんでしたね。
最後に一つ、ネット上で見つけて以来度々良い刺激をいただいている、素敵なパン屋さんの話をして締めくくりたいと思います。


そのパン屋さんとは、広島市で薪釜でパンを焼いている「ブーランジェリー・ドリアン」というお店です。
お店のことは、私があれこれ申し上げるよりもホームページをご覧いただきたいと思います。
<参照>


経営者の田村陽至さんという方は、まだまだお若い方ですが、還暦を目前に控えた私でも、うらやましいと言うか尊敬に値する域に辿り着いたような方です。
その田村さんが、地元紙の「中国新聞」に連載執筆された記事の中で、今日の私の記事の締めくくりにピッタリの記事がありましたので、それをご紹介して終わりにしたいと思います。


平成19年9月13日「中国新聞」くらしのページ、「私の口福」田村陽至・12 より抜粋  元記事のページは <こちら>

曰く
・・・僕の大好きなフランスのパン屋「ポワラーヌ」は、何百年と変わらぬ薪でパンを焼く製法で、世界で一番のパン屋になった。結局、おいしかったのだ。
店主はそれを「レトロ・イノベーション」と言った。
古いやり方で革新するという意味だ。
僕はこの考え方が好きだ。
例えば、みんなが百年前の暮らしをすれば、たいがいの環境問題は解決する。
けれど、人間戻れない。
だからレトロ・イノベーションなのだ。
古い方法で、戻るのでなく、前へ進んでしまえばいい。
実際にできる。
食べ物も、道具も、生活も、昔ながらのやり方の方が質が上がる。
人の手間ひまが、それだけかかっていたからだ。
技術を人の手に取り戻し、古い方法で新しい時代をつくる。
それを実践して、証明してみせるために、僕は今日も明日も汗まみれでパンを焼いてます。

新年おめでとうございます。

頌   春     2010


 




一粒の麦から一切れのパンへ


 


21世紀最初の10年間の最後の年を迎えました。
この一年で、何か一区切りつけなくてはならないような、否、
自ずとそうなるような意義深い一年になることと思います。


食工房は、「一粒の麦から一切れのパンへ」を合言葉に、農家とパン屋とそして食べてくださる方々が、共に喜びを分かち合うために、間に立つ者としてプライドと責任を自覚して、良い仕事を続けて行きたいと思っています。
どうぞ、本年も相変わらずよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。


新年早々、沢山の方々からお年賀状をちょうだいしております。
ありがとうございます。
毎年の倣いで、こちらはこれからお返事をかねて書くところです。


なお新年は、1月7日(木)より営業再開いたします。