日別アーカイブ: 2008年11月17日

時事雑感・2

世界でも屈指の産業・経済大国になった日本。
しかし国の底力は、衣食住に直結する一次産業が、いかに着実に営まれているか、そしてそれを支える国土環境が保全されているかにかかっていると言えます。
例えば食糧に関して、世界の先進各国は、大方食糧自給率が50%以上で中には100%以上で食糧の輸出国になっている国もありますが、日本では40%です。
さらに穀物自給率に限れば、50%をはるかに下回る28%に過ぎません。
今後世界の食糧が不足すると言われる状況の中で、これでは健全な国家の維持は困難です。


ところで、日本はせまい国と言われ、また資源のない国と言われて来ましたが、本当にそうなのでしょうか。
平地が少なく山地の多い日本は、利用しにくい国土とも言われますが、細かく刻まれた山襞を伸ばしたとすれば広大な延面積になるはずで、せまい国土も見ようによっては広いのです。
そして立体的な地形は、場所場所によって日照差や気候差を生じ、生態系を多様にします。
事実日本は、世界でも指折りの生物種の多い環境なのです。
しかも、豊富な雨量によって多くの河川が潤い、この水の恵みのおかげで、土地の生産力は、同緯度の世界の他の地域に比べても突出しています。
これを一つの大きな資源と見られないようでは、この国の真価を見誤ることになると思います。
ただしこれも、大陸的発想の大規模農業を展開するには、全くデメリットばかりが目立つわけで、日本には、日本に合った国土の活かし方がある思いますし、それはもうすでに形になっていたと思うのです。


そう考えると、食料の自給は決して難しい話ではないはずなのですが、日本の政策がそれを難しくしている側面が多々あることは、否定出来ないと私は思います。


工業立国で進んで来たのは良いけれど、そのおかげで、農林水産などの一次産業は衰退せざるを得ませんでした。
そしてここに来て気づくべき一つの問題は、最近厳しくなる一方の国際競争に勝つために、産業界が労働単価の切り下げを始めたことです。
その結果、労働環境全体が劣化して余裕がなくなり、それが顕著に現れた一つの例として、兼業農家が成り立たなくなりつつあることが上げられます。


残業や休日出勤が多い状況では、農業を兼業することは到底不可能です。
私は、兼業農家の中途半端さがある意味良い面を持っていたと思うのですが、それがやっていけない状況を迎えつつあることは、この日本が、一つ大きな曲がり角に来たということだと思っています。
専業農家の存続は、さらに難しい状況ですし・・・。


そもそも日本の農業が行き詰っている一番の原因は、早い話、日本の労働者たちが、自国の農産物を、農業が再生産維持出来るだけの価格で買い上げられない程度の給料しかもらっていないという、産業の構造にあると思います。
世界屈指の産業・経済大国も、実は中身はその程度と言われても仕方ありません。


世界には、小国と言われながらも見習うべき国々が沢山あるのですから、国政を与る方々は、いつまでも大陸的発想に憑りつかれてないで、地の利にあった賢明な国策を展開していただきたいと思う私です。