月別アーカイブ: 2007年4月

よそ者の会津考 vol.1

今日は、月一恒例で会津若松市まで配達に行って来ました。
片道約1時間。
会津の風景の中を走っていていつも思うことは、会津は本当に天然自然の恵みの豊かなところだということです。
そして、ここは一つの「国」だとも思います。
作物は良く出来るし、水は豊かだし、森林資源はもちろん、観光資源もいっぱいあります。
ないのは海岸線だけで、あとはみんな揃っているんじゃないでしょうか。
会津は福島県の西側半分を占める広い地域です。
面積的には、四国の香川県や徳島県より広い地域に、30万人そこそこの人口です。
面積の大半は山岳森林地帯で、人が住めない場所です。
会津の人口の大半は、会津若松市を中心にほとんどが、会津平ら(あいづだいら)と呼ばれる平地に集中して暮らしています。
一見、広いだけで暮らし難い場所だと見られそうですが、私は、このうしろにひかえる広大な山岳地帯こそが、会津の30万人の人口を豊かに養うことが出来る大切な資源だというふうに見ています。
会津で生まれ育った方が同じように見ているかどうか知りませんが、私には、唄の文句ではありませんが、会津全体が「宝の山」に見えています

パン屋です。



本日は、恒例木曜日のパン焼きの日でした。
明日は、毎月一回、会津若松まで配達に出る日なので、沢山パンを焼きました。
おかげで忙しく、そこへかなり無理をして写真撮影をお願いしたものですから、ついに朝食は「朝飯という名のおやつ」になってしまいました。


さて、今さら何を、と言われるかもしれませんが、食工房はパン屋です。
改めて自己紹介申し上げます。
食工房は、完全自家培養の天然酵母を使い、また国産小麦粉、ライ麦全粒粉を使ってパンを中心に、マフィン、スコーン、クッキー、ケーキなど焼き菓子も製造販売しています。
他にもいろいろあるのですが、それはまた次々ご紹介申し上げるとして・・・。
食工房では店売りの他、通信販売もやっています。
どちらかと言うと、通販の方が多いくらいかも知れません。
皆さまから、お問い合わせやご注文をいただくために、いろいろ考え込んでいましたが、連絡先を公開いたします。

カテゴリー ; 食工房へご案内 の記事の中に追加掲載しています。
なおメールアドレスは、只今迷惑メールの混入で頭を痛めていますので、しばらくお待ちください。
お手紙、大歓迎です。

はっぴいえんど

 人気のない朝のコーヒー屋で・・・

      人気のない朝のコーヒー屋で

      ひまをつぶしてたら ひびわれた

      ガラス越しに 摩天楼の衣ずれが

      歩道をひたすのを見たんです

      それでボクも 風をあつめて 風をあつめて

      青空を駆けたいんです 青空を


1970年代前半に青春時代を過ごした方なら、ひょっとしてご存知でしょうか・・・この歌。
いわゆるアイドルではありませんでしたが、日本では不出のロックバンドだったと、私は今でもそう思っている「はっぴいえんど」・・・。
「風・街・ろまん」というアルバムのA面3曲目に入っていた「風をあつめて」という曲は、当時20代前半を過ごしていたボクの感性にあまりにもピッタリとはまってしまったのでした。
人気のない朝のコーヒー屋で・・・は、その3番目のフレーズ。
貧乏、各駅停車、風来坊、友達のアパート、飲み慣れないバーボンウィスキー、夜明けまで語り明かした朝の眠気覚ましのコーヒーの味、そしてバックに流れていた「はっぴいえんど」・・・。
やっぱりここでも、コーヒーは役者でしたね。




 嗅覚はタイムマシン
嗅覚は、五感の中でも一番原始的というか、動物的な感覚だそうです。
だから、匂いは時として、突然とんでもない古い記憶を呼び起こすことがあるのです。
コーヒーを入れている時、フワッと上がってくる香りが鼻に入った瞬間、日頃絶対に思い出すこともないような記憶が、鮮やかに蘇ることがあります。
たとえばそれは、20代の初め一人で東京に住み始めた頃、下宿の狭い部屋で朝コーヒーを入れている、まさにその瞬間の記憶だったり、また別な時、コーヒーを入れてくれる彼女の手元を覗き込んだ瞬間の記憶だったり、そして友達のアパートでレコードに合わせて口ずさんだ「風をあつめて」のフレーズ、それは他のどんなきっかけで思い出す時よりも、ずっと鮮烈な臨場感を伴っています。
その瞬間、どこに連れて行かれるかは分からないけれど、まさに嗅覚はタイムマシン!
あなたは、コーヒーの香りで何を思い出しますか?

飯豊夜話 高野通信2号より



飯豊山が信仰の山であることは広く知られているが、地元の人々にとっては一段とその意義は大きい。
最近でこそ廃れてしまったようであるが、昔は、男子は十五歳になると白装束に身を固めて、先達に導かれながら飯豊山に登ったそうである。
無事、山頂の飯豊山神社に詣でて帰って来られれば、一人前の男として認められることになる大切な儀式であった。
このあたりのお年寄りにうかがうと、皆例外なく一度はこの山に登っている。
一方、昔はこの山は女人禁制で、女性が飯豊山に登るようになったのは近年になってからである。




さて先日のこと(※2004年7月)、念願叶って私も飯豊山中に足を踏み入れる機会をいただいた。
途中、クサリ場と呼ばれる断崖の難所が幾つかありそこを通りかかった際、案内役として同行してくれた知人が、足元に一枚の古銭を見つけて私に手渡した。
聞けばそれは、その昔、この難所を無事通り抜けて山頂まで往って帰って来られるようにと、願いを込めて奉納されたお賽銭であるとのこと。
後の世にたまたま通りかかった私たちに発見されたのも何かの縁かと思い、ポケットに忍ばせて持ち帰った。
往きに一枚、帰りにも一枚、二枚の古銭を持ち帰ったその日の夜半、不思議なことが起こっていた。
息子が、夜の間ずっと自分が寝ている部屋の階下の居間に、盛んに人が出入りする物音が聞こえて眠れなかったと言うのである。
そして、小銭を数える音もしていたと聞いて、私はすっかり納得してしまった。
聞くところによると、あの難所で不幸にも命を落とす人が、少なからずいたそうである。
往きの一枚は、往路難に遭い山頂まで辿り着けなかった人の、また帰りの一枚は山頂に詣でたものの、帰り道に難に遭い里に戻れなかった人の、それぞれの無念の思いをどうにかして欲しいとの現れであった。
今私は、その二枚を神棚に上げ、次にまた飯豊山を訪れる機会を待っている。
その時が来たら、二枚を携えて入山し懇ろに供養するつもりである。




illust by Machiko          

運動不足

パン屋商売は、一日中作業場で立ちっ放しでの仕事になります。
動かしているのは大方手先だけで、ほとんど運動にはなりません。
重いものと言えば、粉の袋が25㎏でそれ以上のものはありません。
生地を手でこねれば間違いなく良い運動になりますが、時間的猶予がなくていつも機械でやってしまいます。
そんなわけで、この商売を始めてから少しずつ運動不足が溜まって来ています。
せめて休みの日に、思い切り体を動かしたいのですが、雑用に追われていつの間にか時間が過ぎてしまいます。
最近さすがに危機感を強めた私は、ちょっとの合い間に体操をしたり呼吸法をやったりして、最低体が硬くならないよう、また酸欠で肩がこったり頭が痛くなったりしないように気をつけています。
会津に引っ越して来て4年目になりますが、まだ飯豊の山頂を踏んでいないので(途中までは行った。)、今から体力が落ちるようでは困るのです。


                       2004年6月の飯豊連峰

文旦ピール

今日は、マフィンとスコーンを焼きながら、また文旦ピールを造りました。
ピールの造り方もいろいろあるみたいなので、食工房のやり方を紹介します。


文旦は、他の柑橘類に比べて皮の苦みや渋みが特に強いので、下ごしらえやアク抜きに手間がかかります。

 下ごしらえ
文旦の皮は、昔はとても厚みがあってワタの部分がいっぱいくっついていましたが、最近は品種が変わって大分薄くなっています。
それでもそこそこ厚みがあって、この部分に渋みや苦みがありますので、ナイフで一層剥がします。
この作業をやりやすくするために、皮を剥く時から一工夫しておきます。
先ず、八つ割りに切り込みを入れて、形が目茶苦茶にならないようきれいに皮を剥きます。
下ごしらえの済んだ皮は、すぐに加工しない場合は数時間乾燥させてから袋に入れて冷蔵庫で保存します。

 アク抜き
ある程度皮が溜まってピールを造ることになったら、乾いた状態で重量を計っておきます。
それからさっと水で濯いで、容量に余裕のある鍋にたっぷりの水と一緒に入れます。
火にかけて加熱し、70℃になったら火力を調節して70℃をキープしながら1時間熱水浴します。
皮は浮き上がりますので、押し蓋をして全部が湯の中に浸るようにします。
柑橘類の香り成分は揮発性の高いオイルなので、沸騰させて茹でこぼすと大分損なわれてしまいます。
70℃は、香りが飛ばず渋みと苦みだけが抜けるちょうどよい温度です。
それが終わったらザルに引き上げ、今度は冷たい水に晒します。
二時間晒して水を替え、もう二時間水に晒してアク抜きは終了です。
ザルに上げて水を切ります。

 砂糖煮
鍋にアク抜きの終わった皮を入れ、全体が十分浸って少し底から浮く位に水を注し加熱します。
砂糖は、先ほど計っておいた乾燥重量の2倍量用意します。
色がきれいに仕上がることと、文旦の香りを殺さないため、上白糖かグラニュー糖のどちらかにします。
これを、時間を追って10回くらいに分けて足し入れて行きます。
煮立って来たら火力をグッと落として弱火にし、先ず一回目の砂糖を入れます。
その後20分毎に砂糖を足しいれます。
鍋の蓋は、蒸発を妨げないように、かといって温度が下がってしまわないくらい、適当に隙間を開けておきます。
特にかき混ぜる必要はありません。
6、7時間かけてペクチンがゼリー化するまで、しっかりと砂糖分を吸収させます。
砂糖が香り成分と結合して貴重な香りを逃さなくなります。
シロップも減って来て、下手をすると焦がしてしまいますので、火力はくれぐれも強すぎないよう気をつけます。
きれいな透明感のあるあめ色になり、しっかりした感触になったら出来上がりです。

 保存
そのまま自然に冷まして、粗熱が取れたらトングでつかんで二重にしたポリ袋に入れ、空気を抜いてきっちりと口を結びます。
十分冷めたら保存期間に応じて、冷蔵または冷凍で保存します。
残ったシロップもビンに入れるなどして冷蔵保存します。
一年間くらい、何の問題もなく保存可能です。

 その他
お菓子造りには、必要に応じて刻んで使います。
角切り、スライス何にしても、刻んでいる時から香りの素晴らしさに感激すると思います。
シロップの方はあまり香りがしませんが、それでもいろいろ使えると思います。


砂糖菓子のようにしたい時は、粗熱の取れたピールの汁気を切って食べやすい形や大きさに刻んで、表面にたっぷりとグラニュー糖をまぶします。
そして、少し乾かしてから保存します。

種蒔き桜

春の遅い東北にも、やっと桜の季節がやって来ました。
飯豊山を間近に眺めるここ山都町でも、これから花見のシーズンです。
食工房のある高野には、近所で一番先に開花する二本の桜の木があります。
「高野の種蒔き桜」と呼ばれるこの桜がここニ三日の間に咲き始め、それにピタリと合わせるように、今週末あたりはこの辺の農家はどこも苗代に種蒔きをしています。
こうして田んぼに水が入ると、春の実感もいよいよ確かなものとなり、農家ではない私でも、何やらそわそわと落ち着かない気分になります。
この季節、外の空気は清々しく気分は最高ですが、パン屋の作業場はこれからしだいにオーブンの余熱で暑苦しくなって来ます。
酵母にとっては活動に適した温度帯になりますが、人間にとってはちょっと大変です。
合い間、合い間に外に出て、外の空気を吸い花を眺めています。


ノーシュガー

砂糖なしのお菓子、自然食の業界ではずっと以前からあったのですが、最近広く知られるようになって来ました。
砂糖なしとは言っても、甘さなしと言うわけではありません。
レーズンなど、ドライフルーツを使ったり、メープルシロップを使ったりして、ほど良い自然な甘味を出しています。
低カロリーでミネラル分の豊富なヘルシーメニューとして、ノーシュガーのお菓子は静かなブームを呼んでいます。
一方、製造する側にとっては、ノーシュガーのお菓子はごまかしが効かなくて難しいと言えます。
小麦粉でも油脂でも素材の味が良く分かるので、グレードの高い材料を使わなくては満足なものが出来ません。
食感の点でも、生地の膨らみが悪くその上日時の経過とともに急激に食感が悪くなります。
でも、アレルギー体質の方のニーズや健康志向の方のニーズで、ノーシュガーのお菓子はこれからますます注目されると思っています。

 シマリス君の朝ごはん
ペットフーズではありません。
レーズンとミックスナッツを入れたノーシュガーのマフィンです。
木の実をかじるシマリスが好きそうな、と勝手に連想してつけた名前です。
BP(ベーキングパウダー)を使わず、重曹とりんご酢で膨らませています。
卵もミルクも入りません。
自家用に造っていた頃から通算すると、もう24年間も造り続けています。
一頃大方一年間くらい、昼食は毎日「シマリス」ということもありました。
自家用には、レーズンやナッツがもったいないというので、サツマイモの角切りを入れて増量したのが「いもリス」、たまに小豆あんを入れた「あんリス」も登場しました。
いつまで経っても飽きの来ない味で、今でも好んで食べています。
そんなわけで、いつの間にか食工房のマフィンは皆「○○リス」と名づけられることになったのでした。
写真は、「シマリス君の朝ごはん」略して「シマリス」、三文字で「シマリ」と呼ぶ人もいました。

余り生地のバタール

 本日の食工房
今日は木曜日、やっぱり忙しいパン焼きの日になりました。
ブログを書く暇がないかも知れないと思いましたが、配達が早く終わりましたので、ちょっとの合い間にデスクに向かっています。
 余り生地のバタール
食パンを造る時、いつも少し生地が残ります。
定番品の三種類の食パン生地の残りを合わせるとそこそこの量になりますので、何とかしなくてはいけないと思って造り始めたのが「余り生地のバタール」です。
そういうわけで「余り生地のバタール」は、厳密に言うと毎回中身が違っています。
と言っても、ライ麦全粒粉の割合が少し増減するだけなのですが、色合いや食感が違うことにすでにお気づきの方もいらっしゃると思います。
ところが最近、「余り生地のバタール」のご注文が増えて、余り生地だけでは間に合わないことがあるのです。
今日はとうとう、そのためにわざわざ生地をこねることになりました。
嬉しいことではあるのですが、これがいつものことになるともう「余り生地の・・・」ではなくなりますね。
でも、何となく気を引かれる「余り生地の・・・」、名前はやっぱり残そうかなと思います。
今度は、余り生地の・何、を造りましょうか。
頭をひねっているところです。

私とコーヒーの出会い

今でこそコーヒーを商売のネタにしている私ですが、レギュラーコーヒーを自分で入れて飲むようになったのは、大人になって独り立ちしてからのことです。
昭和20年代後半生まれの私、しかも育ったのは四国の山奥の小さな村、喫茶店もなければ日常コーヒーを嗜む人などいるわけもなし、意外にも私とコーヒーの付き合いは、中学生の頃にインスタントコーヒーから始まりました。
かの有名なネスカフェは、その頃四国の山奥の小さな村に初めて出来たスーパーマーケットの店頭にもちゃんと並んでいました。
牛乳を沸かしてインスタントコーヒーと砂糖を溶かして飲むというのが、飲み物の中では一番気が利いているという感じでしたね。
「カフェ・オーレ」なんて言えば聞こえは良かったでしょうが、そんな呼び名は聞いたこともありませんでした。
今は「コーヒー牛乳」がレトロ感覚にマッチしてウケたりするのですから面白いですね。
その後、ジャズ喫茶に通うようになったりして、レギュラーコーヒーの香りと雰囲気にすっかり浸ってしまい、以来、豆から挽いてコーヒーを入れるという手順を踏んでみたくなったのでした。
手回し式のコーヒーミルとネルドリップフィルター、それにホーローのポット、実はこれが自分で稼いだ金で買った最初の所帯道具と言えるものでした。
そしてコーヒー豆は、コロンビア、モカ、ブラジルの三種類。
今思うと最初からコーヒー通を気取っていたようで、何とも愉快な思い出です。


 
 
不思議な味わい、ネパールコーヒー
ネパールというとインドと並んで「紅茶の国」という感じがありますが、少ないながらコーヒーも生産されています。
そしてネパールのコーヒーは、コーヒーの主産地である中南米や中東、東アフリカなどのコーヒーとはちょっと違った不思議な味わいがあります。
何と言ったら良いのでしょう、お茶の雰囲気なんですね。
繊細でスッキリとした苦みがあり、酸味はフルーティーでいつまでも口に含んでいたいような爽やかさがあります。
後味もあまり残らず、何杯でも飲めそうな感じです。
今、ブラジルの豆とブレンドの相性を試しているところですが、これがなかなかイケそうなんですね。
食工房カフェブレンドに、もう一つ新しいメンバーが増えるかも。